札幌東ロータリークラブ様60周年記念事業第二部:武田真治さんとの対談

武田真治さんといえば、多くの聴覚障害者は
ドラマ「君の手がささやいている」を思い出すのではないでしょうか。
ろう者ヒロインの夫役で、手話で演じた姿が印象的でした。
 
そんな武田真治さん、このところ毎日のようにテレビでお見かけするたびに素敵だと思うのは、お辞儀の美しさ。
内面からにじみ出る礼儀正しさは
肉体的なフォルムの美しさをも際立たせるんですね。
 
札幌東ロータリークラブ様60周年記念事業の第1部で基調講演を
その後第2部では札幌出身の武田真治さんとの対談がありました。スペシャルな企画です!
実は武田さんとは、対談で初対面のぶっつけ本番予定でしたが
ラッキーなことに、講演直前に到着されてご挨拶できることに。
 
思わぬ展開にうろたえながらご対面。
「こんにちは」「はじめまして」「よろしくお願いいたします」などと
手話で話しかけてくださり、それだけで舞い上がる私。
美しさに目がくらむとはこのことでしょうか。
自分の講演のことをうっかり忘れそうになりました。
 
気持ちを切り替えて講演を終え、ほっとして舞台袖に戻ると
武田さんが待機というシチュエーションに、これまたドギマギ。
何度見ても美しいものは美しいのです。大丈夫か私。
 
隠そうにも隠し切れない浮き立つ心で武田さんと再びステージへ。
スキップしていたかもしれない。
進行役として福津京子さんがいてくださって本当に良かった。
 
今回は、手話通訳と文字通訳が用意されていたのですが
難聴の参加者から、ご自身の補聴器に直接音を届ける
補聴マイク(ピンマイク)を着用して話してほしいという申し出がありました。
補聴マイクと、補聴器はBluetoothでつながっているので直接音を伝えることができるのです。
つまり、話す人は会場向けのマイクと、補聴マイク2つを着けることになります。
私と武田さんはそれぞれピンマイクを着けていますが
補聴マイクは1台のみなので、私と武田さんとで共有することにしました。
 
私自身は、これまでも同様なケースはあり慣れているのですが、会場の皆さんは気になるかもしれない、ということで
最初に説明をすることにしました。
そうすることで、手話や文字通訳の他、難聴者向けにこんなシステムもあることを全員で共有できるメリットがありますね。
 
その後は、ひとつの補聴マイクを武田さんと持ったり渡したりのやりとり。(個人的にここがツボ)
「おかげで武田さんとカリンさんの声がはっきり聞こえました」と喜んでくれました。
 
さて、武田さんのお話しは素晴らしく、一言でいうと
「誠実な人柄と大胆なサービス精神」。
 
ドラマ「君の手がささやいている」の話題では
「精一杯取り組もうと頑張った」とまっすぐなまなざしで語ってくれました。
その理由として武田さんのお母様、そしてお祖母さまのエピソードを聞いて涙が出そうに。
幼いころから「伝えあう」ことに向き合い
目と目を合わせての会話が自然なことだったと。
私が子育てをする時もそうだったし、ケンカの時でさえも目を合わせると話すと
「目を合わせるとうそがつけない」
という一言に会場の皆さんも爆笑。
 
チェッカーズの影響で始めたサックスについては
お父様にサックスを買ってもらうための工夫と戦略のアレコレが笑いを誘いました。
「実は会場に両親が…」と、これにはみんなびっくり。
お二人が立ってご挨拶されると会場中から空気を揺さぶるような拍手。
ご家族に愛され、愛し、そんなお話を聞きながら
なんて親孝行なんだろう、聞いているご両親嬉しいだろうなぁと、親の気持ちになってまた涙が。
 
「手話を知ることがその後の仕事や武田さんに影響があったか」を尋ねると
身体表現の豊かさや幅広さにも繋がり
舞台やミュージカルなどへの挑戦も増えたとのこと。
「好きな手話は?」
「”嬉しい!楽しい!”」
顔の表情が最高です。
マイクへの配慮も忘れずに、上手な話し運びに惚れ惚れとしました。
 
私も舞台やミュージカルが大好きで、札幌劇団四季の「リトルマーメイド」では
メガネ型端末による字幕表示サービスがあることや、
翌日鑑賞予定であることを伝えると驚かれていました。
楽しみの選択肢や幅が広がることで
いずれ武田さんのライブも楽しみたいというと、
そのときはこっそりではなく堂々と来てくださいね!と。
聞こえない人も楽しめるように考えてくれるのではと勝手な解釈をしております。笑
 
25歳の時に顎関節症と診断され
芸能界という場所で仕事への意欲も失い、価値を見出せなくなった時期もあったとか。
逆にそうした経験が、色々な立場の人へ思いを寄せるきっかけにもなったそうです。
こうした自身の挫折や葛藤など、弱さの情報公開をまっすぐな言葉で語り
そこからどのように歩んできたのか、自分を客観視する視点は
誠実であり清々しくもあり、私たちの胸に直球で届きます。
ジャケットの下に隠された厚い胸板が持つ説得力。
 
気が付くとやはり目はそこに。
だって吸い込まれるほどの谷間のようなくぼみがあるんですもの。
 
「わたしから二つリクエストがあります」と申しでました。
一つ目は「さわらせてほしい」ということ。するとジャケットに手をかけるので
「ぬ、ぬぐんですか?」と思わず聞く私。
すっくと立ちあがり、美しい身のこなし方でジャケットを脱ぎ
ステージをゆっくり歩く様子に
私も進行の福津さんも会場中もおそらく目がハート状態。
そうして、戻って、どうぞ!と上腕二頭筋いわゆる力こぶを触らせていただきました。
「カタい」と手話で表現すると
武田さんも真似されたのですが
力こぶ状態での「カタい」手話の説得力といったら!手話を知る人なら分かるでしょう。
 
そうして二つ目は「一緒に筋肉体操を!」
このためにジムでトレーニングしたことを伝えると「珍しい女性ですね」と。笑
 
ステージ前方で武田さんと向き合い、スクワット指導。
せっかくだから、高校生たちも!他のお客さんも!と結果会場中が立ち上がり
武田さんの「いーち、にーい、さーん…」という掛け声とともに
会場500人全員での筋肉体操。
「女性は10回、男性は15回!」という掛け声に合わせ15回やり切った私です。
汗が出てきました。翌日どうなったかは聞かないでください。
 
「“筋肉は裏切らない”って、手話でどうやるの?」
肩で息している状態で、武田さんと手話相談。
筋肉は真実を表す、という意味で“本当”の手話で表現することに。
力こぶを思い切り出しながら
“筋肉は裏切らない”と決め手話。
 
福津さんの落ち着いた絶妙な進行と
500人全員総立ちスクワットで武田さんに魅了された会場。
「筋肉は会場をひとつにするね!」と爽やかな笑顔に大拍手でした。
 f:id:karinmatasumori:20190331182937j:plain~以下は舞台裏~
その後、招待した地域の高校生たちと別室で記念写真。
カメラマンが「笑顔が足りない」というと
武田さんが立ち上がり高校生に指導をはじめたのです。
「カ・リ・ンー!で飛び切りの笑顔を!」と。
ハイ、チーズ!とかじゃなくて「カリンー!」
その後繰り返される武田さんの「カリン!」サービスに嬉し恥ずかし状態でしたが
彼の頭の回転の速さと、盛り上げ上手な細やかな配慮、
そして大胆なサービス精神に
だから関わった方々は魅了されるのだと思いました。
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