手話があちこちにあふれた葬儀。こんな場でこそ情報保障は必要。

自分の気持ちはさておき、
大切な友人の葬儀について、記しておかねばと思う。
親友でありママ友であり
井戸端手話の会を20年共にしてきた大西紀子ちゃんが息を引き取り、一週間。
雪の中のお通夜と、一転青空となったお葬式。
 紀子ちゃんのご家族と相談し、
二日間公的な手話通訳の派遣を依頼しました。
手話サークルや講習会でも人気者だった彼女の友人には聞こえない人も多くいます。
こんなとき私の想像を超えるアイデアを出してくれるのが
井戸端手話のメンバーのすごいところ。
「井戸端手話のメンバーは、リボンブローチつけて手話ができることを表示したらどう?」
「いっそ聞こえる聞こえない関係なく手話ができる人みんなつけたらいいよね」
とその日のうちに
約30個ものリボンブローチが出来上がりました。

『こちらのリボンをつけているものは手話ができます』
『手話でのお手伝いができる方はこちらのリボンをおつけください』
と書かれたポップも作成。

受付担当はもちろん手話ができるママ友たちですし、筆談ボードも用意。

お通夜当日、仕事を終えて駆けつけるとあちこちにリボンをつけた人たち。
夜なべして作ったリボンブローチあっという間になくなりました。
足りないほど、手話がわかるひとが多く参列していたということです。
このリボンのおかげで、何かの時は声をかけやすく
(特にマスクで顔の判別しにくいため)私も助かりました。
聞こえない参列者からは

「あちこちで手話が見えるからほっとした」
「手話通訳があったからお坊さんの言葉など、初めて知ることができてよかった」
「受付の対応も手話で素晴らしい」
「お葬式にも手話通訳派遣できるんだね」と初めて知った方もいたようです。
こんなときこそ、情報保障は必要ですし、当然のことだと受け入れてくれたご家族や、
井戸端手話の会だからこそできるアイデアの実行をしてくれたメンバーは、本当に素晴らしく、誇りに思います。

閑話休題
生前「お葬式の時のカツラの指定なかったら林家パー子にするからね」
蜷川実花さんみたいにお花いっぱい素敵にして!」
そんな会話をしておりました。
もちろん井戸端手話の会は用意周到ですからパー子のアフロカツラを用意してました。
そんなことを思い出し、葬儀の数日前ご主人に「そういえば、カツラは…」と真面目に相談。パー子もあるんだけど…と。
結果「蜷川実花さんみたいに赤や鮮やかなお花で顔の周りをいっぱいにしてあげよう」と。
そして本日、最後のお別れの前に
飾られた花をお棺におさめるとき。
「これよりご遺族のみで、一般の方はご退場下さい」と
繰り返し事務的にアナウンスをする葬儀スタッフに対して
「井戸端(手話の会)の人に、手話の人に花を入れてもらいたいんだ。
蜷川実花さんのように顔の周りを花で飾って欲しいんだ」
と毅然とした態度で伝えてくれたのです。
紀子ちゃんだけでなく
その友人たちをも大切に考えてくれるご家族。
だからこそ愛の溢れた紀子ちゃんなんだと改めて感じた瞬間でした。
生前自分で希望したカラフルなお花に囲まれて、
そしてBGMは彼女が手話の傍ら力を入れていたマンション内の合唱部の皆さんの美声による「千の風になって」。
彼女にも、来てくれた方々にも、みんなみんなありがとうございます。

彼女らしいお葬式ができたかなぁ…と帰り道見上げると抜けるような青空。
上を向いて歩いていたら公園で遊ぶ子どものボールがゴンッ!
目が真っ赤の私にギョッとしつつ、ごめんなさい!と礼儀正しい子どもたち。
柔らかボールだから痛くなかったけどマンガみたいなオチ。
雪からの青空からの当たり!彼女の演出だろうなぁ。