当事者参加型の議論。成田空港のUD委員会

「先例にとらわれることなく、その時その時より良い選択をする」



成田空港のユニバーサルデザインにおいて
聴覚障害に関してある決断が必要な時がありました。


「前例のない新しいことを選択するか」
「過去の先例を踏襲するか」


様々な根拠をもとに幾度も議論した結果、空港側は
「前例のない新しいこと」を選択する決断をしました。



私は、すごいなと拍手をすると同時に不安もありました。
そこで
「過去のやり方を変えることになるが、空港側として大丈夫なのか?」と問いかけたのです。
冒頭の言葉は、そのときの回答でした。



「先例にとらわれることなく、その時その時より良い選択をする」



新しいことにチャレンジするというのはそれなりの覚悟が必要です。
たいていの場合は
「前例がないから」
「予算がないから」
「今後の検討事項に」といった理由で
過去の事例を踏襲する安心コースが選択されることが多いと思います。
ましてや、日本の玄関口、成田空港ですから他の公共施設にも大きな影響もあります。
でも、
こんなきっぱりとした一言で「この人についていこう!」って思えます。



こんな方々と一緒に仕事ができて本当によかったと、しみじみと思う瞬間です。



様々な委員会に参加しますが、なかには十分な議論がされないまま
形式だけで取り繕うようなものもあったりします。
しかし、成田空港のユニバーサルデザイン推進委員会では
より良いものを目指して真剣に真摯に取り組む熱意があり
建設的な議論を通して、
どこまで「より良いもの」に近付くことができるのか毎回ワクワクします。



そんな成田空港のユニバーサルデザイン
2017年5月から開始し現在もなお様々なテーマで議論を繰り返しています。
私は、聴覚障害とあまり関係がないと思われる分野でも、できる限り参加するようにしています。


どんな障害でも、共通する部分は必ずあり
建築デザイン、サイン計画、情報デザイン、視覚障害者誘導、階段やエレベーター、人的対応にいたるまで
すべて繋がっていることだからです。
あらゆる障害のある当事者や関係者と、事業者側や専門家と共に議論を重ねていくことは
私にとってとても刺激的です。
多様な視点を知ることができるだけでなく、
進行の仕方、発言の仕方、言葉の選び方から、議論の仕方まで、全てが学びに繋がるからです。


仕事って「何をやるか」も大事ですが
「誰とするか」も、とっても大事だなって
冒頭の言葉を思い出して何度も思うのです。