久しぶりの一気読み!「脳が壊れた」


久しぶりに一気読み。(一気飲みじゃないです)
「脳が壊れた」←インパクトあるタイトル。
http://www.shinchosha.co.jp/book/610673/

41歳で脳梗塞になった鈴木さんの脳が壊れていく様子を言語化したものです。


私がこの本に興味をもったのは、脳梗塞や病気そのものよりも
取材記者であった本人が、脳が壊れることによって起こる現象や経験、
その辛さを「言語化」していく部分です。
(専門用語では当事者研究とも言われます)


本人は見た目は「普通」の人と同じにまで回復したのに
高次脳機能障害という「外から見えない障害」が残ります。
この「外から見えない障害」を周囲に伝えにくいツラさというのは
聴覚障害のそれにも似ています。
環境や体調によって聞こえ方は変化し、音は聞こえても声の聞き分けはできないとか
相手の声質によって聞こえたり聞こえなかったり、
年中無休で耳鳴りがしているから、聞こえないのにうるさいとか
それによってもたらされるバリアや苦しみをを伝えるためには
「ことば」が必要になります。
でも、自分ですらも把握できない状態を言葉にするのは難しいものです。
高次脳や聴覚障害だけでなく発達障害うつ病精神疾患
内部障害など、外見で分からないあらゆる人に共通することかも。
私は8年にわたる失聴期間中、常に「今の苦しみを言葉にするとどう表現するのか」「今の耳鳴りはどんな擬音表現になるのか」
などを日記帳に書き留め言語化していました。


著者の鈴木さん、これまでの取材、執筆経験から
徹底的に自分自身を取材し、内観し、言語化していきます。
トイレの個室に現れた老紳士現象、中二病女子的症状、「妻の罵声」リハビリ、などなど
わくわく(といったら不謹慎ですが)する言葉の連続。
読んでいると、脳ミソをマッサージしてもらうような気持ちよさがあります。


『苦しみを他者に伝えられない「見えづらい苦しさ」は想像以上の孤独と
生死にかかわるリスクをもたらす』という一言に納得。