今までで最高の取材

karinmatasumori2007-12-03

リクルートスーツをきちんと着こなして、ちょっと緊張気味の彼女はスケッチブックを抱えていた。

先日、大学生の女の子から取材の依頼があった。大学の講義で様々な人にインタビューをし、発表するための取材だという。講義の一環ということなので、雑誌の取材などとは違って写真撮影もなく、気楽な気持ちで私は引き受けた。けれども彼女は、事前に質問事項やインタビューのポイントを整理して送ってくれたり、待ち合わせ当日には、自分の写真を携帯で送ってくれたりと、とても丁寧な準備をしてくれたのだ。
それだけではなく、当日彼女には筆談で対応してもらうことになっていたのだが、カフェの席につくと、持っていたスケッチブックを広げた。
それを見て、私はたいそう感激した。

スケッチブックの一枚一枚に、インタビューの進行の言葉が書かれていたのだ。

「本日はお忙しい中、ありがとうございます(笑顔のイラスト入り!)」から始まって、
「よろしくお願いします」
「ではインタビューを始めます」
「どうもありがとうございました」にいたるまで、全部で20枚くらいあっただろうか。それぞれサインペンと色鉛筆を使って、かわいいイラスト入りで準備をしてきてくれたのだ。それを紙芝居のように、一枚一枚めくりながら、インタビューは進められた。

聞けば、前夜は緊張のあまり眠れなかったのだとか。
聞こえない人と話をするのは、初めてだったという。私と会うために、簡単なあいさつの手話を覚え、さらに、手話通訳を介さずにインタビューを進めるにはどうしたらいいのか、色々考えて、様々な工夫を凝らしてくれたこと、相手ときちんと向き合おうとする彼女の姿勢に、とても新鮮な感動を覚えた。

仕事柄、取材を受ける機会も多い。
私は普通に話すことができるが、相手の言っていることは聞こえない。だから先方に手話通訳を用意してもらうことが多いのだが、手話通訳を介さずとも、相手に伝える方法は色々あるのだ。こうした工夫を考えることができる彼女のような柔軟な感性をもった人が増えたらいいなと思うし、
彼女は社会に出ても、きっといろんな人とコミュニケーションしていくことができるだろう。

私がこれまで受けてきた取材の中で、一番いい取材だった。