溢れんばかりのおたまと包帯とオトコゴコロ

息子の先生の家庭訪問だというのに、息子が帰宅しない。
2時には下校しているはずなのに。
心配しながらも、掃除をして床も磨いた。
三時半ごろ、やっと玄関の人を感知して光るライトがついたので、
「おかえり〜」と出ると、玄関には男の子三人。
中くらいの虫かごを囲んで覗き込んでいる。

そこには溢れんばかりのおたまじゃくし。息子の手にはザリガニだ。
「ちょっと持ってて!」とザリガニを私に押し付けると、ランドセルを放り投げて、おたまの溢れる虫かごを抱えて、どやどやとベランダに。

「ああ、こぼれる〜〜!」
ザリガニ片手に後ろから追いかけつつ、「宿題は?」
「おたまとザリガニの救出が先!」と真顔で言う。
ベランダを覗くと大きめの虫かごにおたまをうつしていた。
学校の池におたまじゃくしが沢山いるのだが、今日は校長先生が「持ってかえってもいいよ!」と言ってくれたんだそうな。
そんなことを言われた「ほどほど」を知らない子どもたちは、嬉しくって、池のおたまをたんまりとすくい上げてきたのだ。三人とも素手で捕ったであろうその手も顔も洋服も泥だらけ。生臭い。

ああ、掃除したのに〜!20分後には先生が来るんだぞ。

大きな虫かごで悠々と泳いでいるおたまは、みんなで育てるんだそうな。ざっとみたところ、50匹くらいはいるんじゃなかろうか。おたまの移し変えが一件落着し、ザリガニを渡すと
「包帯ちょうだい!」といわれた。

「包帯?どうして?何に使うの?」
理由を問うが、「いいからちょうだい!!」といってきかない。
そのうち、汚い手で戸棚を開けて薬箱を探しだしたので思わず怒ってしまった。

すると「もういいよ!」と言って、近くにあったヒモを持って外に出てしまった。


晩御飯のときに、どうして包帯が必要だったのか改めて問うた。

「ザリガニの前足が、怪我をしていたから。」

くっ…。

(髪の毛がはねていたから切った)
(暑かったから、袖口をハサミで切った)
ふと、過去の「○○だから××した」パターンが脳裏をよぎる。
いかんいかん、ここは子どもの純粋な気持ちに向き合わねば。


そういう理由なら、言ってくれれば相談にのって一緒に対処できたこと(どんな対処だ?)、君たちの優しい気持ちに心を打たれたことなどを伝えた。

何も隠すことないじゃないか〜。
なんでだろう?
恥ずかしかったのか?
ちょっとオトコゴコロが微妙に分からなくなったハハであった。