相棒

それは、私の相棒、というよりまるで身体の一部のように誠心誠意尽くしてくれていた。
学校や部活関係の緊急連絡など大事な連絡を伝えてくれるのはもちろん。
電話のできない私の耳となり口となり、相手に伝えたいことを瞬時に伝えてくれたし
手となり足となり、電車の乗り換えを教えてくれたり、写真を撮ってくれたり
朝は毎日必ず揺すって起こしてくれていた。
起きるまで起こし続けてくれた。
私は片時も離さず常に密着し、時にはともに入浴するくらい溺愛していたのに、そんな蜜月に別れを告げて、約一カ月。



現在の相棒とはなかなか仲良くできないでいる。
ウワサでは、筆談を楽しくするツールをたくさん持っていたり、よくわからないけれど生活に便利ないろんなことができるという。
なのに、いまだに手におえない。
ちょっと大きめの体躯なので、扱いが大変。
私がボディタッチしてもそっぽをむかれる。
言いたいことをしょっちゅう間違って伝えてくれる。
虎ノ門」って言いたいのに「虎の巻」になってるし、
爪が長いから嫌なのか?
いやならいやだとはっきり言ってほしい。
「ベランダにアブラムシ大発生!」と伝えたかったのに
「ベランダに油揚げ大発生!」になっていた。
毎日きつねうどんか。
以前は表情豊かな顔や、色とりどりの表現を見せてくれたのに、それすら引き出すのも大変な状況。
朝だって、起きたい時間を伝えても、やる気のないような揺すり方で寝坊してしまった。
枕に敷かれるのを嫌がっているようだ。


それでも私にとっては必要な存在。
手放すことができない存在。
故に仲良くなろうと日々努力しているが、チョットしたことでイラッとしっぱなし。
なによりも、あのつるんとした表情がいただけない。
ブラインドタッチができないのだ。
以前の相棒は、会議中でも机の下からこっそり便宜を図ってくれていたのに!