ゲラメモ

karinmatasumori2013-01-22

「カリンさん、手話リンガルの原稿ゲラがあったら頂けませんか?」

「え?ゲラ?ゲラってあのゲラだよね?」

「そうです、ゲラです。赤入りや修正が入ったまんまのゲラです!そのゲラがあったら…」


R嬢とこんなゲラゲラな会話を交わしたのが昨年のはじめごろだったか。
R嬢との出会いはなんだか面白い。
当時大学生だったR嬢。
たまたまテレビで見ていた「NEWS23」
たまたま私と当時三歳の息子が手話で会話をしているシーンやら私の日常生活やらが映し出された。
たまたま手話を少し学んでいたということもあり

「赤ちゃんでも手話ができるなんて!いつかこんな本を作りたい!」とまで思ったとか。


しばらくした後、
たまたまアルバイトを始めた株式会社UDジャパンで
たまたま私が取材を受けることになった。
かじったばかりの手話なのに、R嬢に手話通訳をするようにと社長命令。
当日彼女は驚いたという。
先日テレビで見たばかりの「松森果林さん」。
そんな事情はつゆ知らず、
「見習い」だとは聞いていたけれど
こちらから見ても分かるくらいに緊張し、手も震えているし(笑)
表情は硬く、ぎこぎこブルブルの手話通訳。
でも、とても熱心な目力と、伝えようという一生懸命さに、こちらも真摯に答えようと思わず座りなおした。



「あの後はしばらく忘我の境地でした」と後日談。



そんな「たまたま」の連鎖反応はR嬢のUDジャパンへの正式入社と繋がった。
おめでとうを言う間もなく彼女から連絡があり


「0歳からの手話」という本の出版企画相談が。
こちらが感想を述べる間もなく、次から次へとバージョンアップした企画書が送られてくる。
若さと勢いと熱意が十分に余りあり、会えばいつも上気しているR嬢。
社長からの企画GOサインがなかなか出ず、何度も何度も練り直したという。


そうして出来上がった「0歳からの手話の本」
http://ud-japan.shop-pro.jp/?pid=8596204
なつかしい!
一緒に呑んでみたらいけるクチ。
会うたびに手話が上達し、美人度も女っぷりもぐんぐんとあがっていく。
仕事はカンペキ、執筆から編集、イベント企画から進行まで何でもこなす。
柔らかで豊かな感性と、芯の強さ、恵まれた美貌。
その一方で、ソフトクリームを食べた時には無心になるあまり、口の周りがまるで子どものようにクリームだらけで真っ白にするのも彼女の魅力か。
そんな魅力に虜になった素敵な彼との結婚式に呼ばれた時には、立派に成長したなと感極まって涙。
娘を手離す親の心境か。



冒頭のゲラゲラの話に戻る。

東日本大震災で仕事が激減している被災地にて
「ゲラを使ってノートを作る」という新たな職を起こす目的を聞き、
このゲラを「再生利用」してもらえるのなら、と思いを込めてR嬢に託した。
それがこんな素敵なメモ帳になって戻ってきたのだ。
南相馬市の障害者施設で、一つ一つ手作りされているが、それは見事な「和製本四詰め綴じ」という職人技。
ゲラを中折りにして、裏の白紙部分をノートにしているのだが
ページをめくると、うっすらとゲラが。
赤ペンや鉛筆などで修正事項が書き込まれていて何だかワクワクしてくる。
このワクワクは何だろうかと考えたら、
そうだ、成人向け男性週刊誌などで「袋とじ」がある。
あれを上から覗き込むときのワクワクドキドキ感に似ているのだ。
思わず鼻の下を伸ばして覗き込みたくなる。
もっともこちらのゲラは真面目な原稿ばかりだが。


一冊735円。
被災地の再生と支援にもつながる一冊、間もなく卒業シーズン、記念品や贈り物にもぴったりだ。
「誰でも手話リンガル」のゲラが入っているゲラメモを持っている人いたら、ご一報を。笑
ゲラメモ
http://pre-nippon.com/index.html