TEDxkumamoto2019情報保障編

f:id:karinmatasumori:20191012131301j:plainTEDxkumamoto2019では手話通訳とUDトークによる文字通訳がつきました。

TEDxでのトークは、スピーカーが熱い想いを世界中に伝えるために、
一字一句を念入りに吟味、トークの練習も重ねるため、
要約せずにそのまま音声認識で伝える方法が向いているのです。
今回は、事前に関連する用語をとにかく単語登録することによって認識精度を高め、
修正者不在でやりきったのがすごかったと思います。
休憩時間に行われた、スピーカーによるパネルディスカッションでは、
会場入場時にUDトークQRコードをシェアし、
司会者もパネラーもゲストも全員が自分のスマホで、UDトークを使いながら進める方法。質疑応答で質問するときも。

認識された画面はスクリーンに映し出され全員で共有できるので、
認識されないときは、話し直すこともありましたが、
このような珍しい進行方法を楽しんでくれていたように思います。

また、本番までの打ち合わせはグループメッセンジャーのほか、
ビデオ通話で顔を見ながら、UDトークによる音声認識を活用してのやりとりを重ねました。(誤認識にゲラゲラ笑いつつ)

参加者に配布された資料には、UDトークQRコードがつき、
ほぼ全員がダウンロード。

歩きスマホならぬ「しゃべりスマホ」があちこちで発生。
受付では「筆談による案内」や運営スタッフや
高校生のボランティアの皆さんは簡単な手話を事前に学んでくれていました。
覚えたての手話で自己紹介をしてくれる高校生たちが素晴らしくて感激の連続。

多様性を重視する「TEDxkumamotoだからこそできた情報保障」でした。

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「情報保障」…それは6月に登壇打診があったときに、私が真っ先に相談したことでもありました。
本番当日はもちろん、前日のリハーサルや、本番までの打ち合わせもふくめ
「連続した情報保障」が必要だからです。

そのために、自分自身の聴覚障害やコミュニケーションなどについて
自分の言葉で、最初にしっかり伝えるようにします。

よりよい対話をするために、そこにいる全員が同じ情報を享有するために
どんな方法があるのか、ともに建設的な対話を重ねていくのは
私にとって楽しい時間の一つです。

そうしてたくさんの方々の知恵や技術と、熊本情報提供センターの協力によって、
「TEDxkumamotoだからこそできた情報保障」が実現しました。

 

熊本へは、息子をアシスタントとして、コミュニケーションのサポートをする役割で同伴したのですが、
現地についてみると私の案内をしてくれる高校生たちは、
一生懸命手話を使ってくれたり、UDトークで話してくれるのです。
そんな彼女たちの姿を、息子は見守りつつ困ったときだけ自然とフォローをしているようでした。そして「高校生であんな体験ができるのはうらやましいことだね」と。

終了後の懇親会で、高校生たちがわたしのところへきて
「もっと手話を勉強したいです!」と
キラキラな瞳で言ってくれたときは、胸がいっぱいになったのでした。

 

最後に…以下は伝説として語り草になるであろう後日談。
6月に代表者であるキャプテンこと松岡さんとお会いしたのは、某ホテルのロビー。
UDトークとPCでのやり取りでしたが、
松岡さんの背面一面ガラス張りで逆光線がまぶしく、涙が出そう。
読唇できず文字も読みにくい…と思いつつ、
松岡さんの熱と圧に圧倒されていた私です。うっかり「まぶしいです」とかいったら「そんなに俺がまぶしいか」とかいわれそうで。
「おいっ」という松岡さんのツッコミが聞こえそうです。

実は松岡さん、UDトークを使用するために、
ホテル側にノイズとなる「BGM」と「池の滝の音」を止めてほしいと交渉してくれていたのです。
BGMはまだ理解できるとして(いやこれでもすごいです)、
ホテルの庭園の(まぶしいガラス張りの向こう側の)滝まで止めていたとは。
なんてありがたいことでしょう。
「滝を止める男」おそるべしキャプテン。

こんな方がいたからこそ、
「TEDxkumamotoだからこそできた情報保障」が実現できたのだと改めて思うのでした。

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