生まれて初めて「パン喰い競争」に参加した。
週末は小学校の運動会。今年は小学校創立300周年記念?とかで、PTAレースは昔なつかしパン喰い競争だったのだ。それも、昔々のお殿様のちょんまげヅラをかぶり、水戸黄門のテーマソングに合わせてのレースだという。かなり悩んだが、今回のチャンスを逃したら、この先一生パン喰い競争にありつけるチャンスはないかもしれない。これは貴重なチャンスなのだ。
堂々参加表明をした。
当日はヅラをかぶりやすくするために、髪の毛をまとめていった。
足元は年に数回しかはかないスニーカー。
グラウンドの中央には袋に入ったアンパンがぶらぶらとゆれている。
横一列に10人ほど並んだ保護者達。
みんな、ちょんまげヅラの脇から髪の毛がぼうぼう出ていてるぞ。
きちんとつめなさいよ!心の中でつぶやきつつ、私は準備万端だ。
ざわざわしていた保護者達の空気が変わった。そろそろか。
って、私はスタートの合図が聞こえないじゃんか!今頃気付いてどうする。
とりあえずは落ち着いて、前方をしかと見る。
そうすると、私の視野は230度くらいに広がるのだ。
普通の人の視野は頑張っても180度くらいが限界だろう。しかし聞こえない生活を何年もやっていると不思議と視野が、というか視界が広くなるのだ。
前方を見つめ、両隣の人の呼吸の動きや筋肉のわずかな動きをとらえて、一緒にスタートする。
見ていた息子の話によれば、「本物のチョンマゲのように一体化したママは、早くも遅くもなく、見事なスタート」振りだったという。中学や高校のときの体育祭もこれで乗り切ったもん!
肝心なレースはというと、私はパンを落としてしまい、地面にはいつくばってまでパンを食い拾って頑張った。
頑張りました!
なのに、友人達に聞くと、
「みんな手を使っていたのに、最後まで手を使わなかったあんたはさすが!」だと褒められた。
え?
みんな手を使ってたの??
パン喰い競争って、手を使ってはいけないという公然のルールがあるではないか。
ルール違反なんて、子ども達の見ている前で教育上よろしくないことこの上ない。
「まったくもう、みんな大人げないなぁ〜」とぼやいたら
こう返ってきた。
「はたから見れば、必死になってるあんたが一番大人げない…」