オリジナルろ過装置

「ペットボトルと、カッターナイフと、布とキリを貸して!」


学校から帰ってきた息子とK君T君ドブ川チームの三人組が、どやどやと我が家に駆け込んできた。
リビングにカッターマットを広げて、またなにやら作戦会議をたくらんでいる様子。
適当な布がなかったから、使い古したバスタオルを小さくきったぼろ雑巾を渡す。


数分後にできあがったのは、ペットボトルを利用したろ過装置。


学校帰り、
「雨が降ってきたなぁ、これ何かに使えないかな〜」
「そうだ、前にテレビでみた無人島サバイバルの真似をして、雨水を飲める水にろ過しようよ!」


三人ともテレビで見た記憶を頼りにしただけの、超オリジナルなろ過装置。逆さまにしたペットボトルの下にぼろ雑巾つめ、その上に小石を乗せて、その上に土を乗せただけだ。
きちんと作り方を調べてからのほうが良いのでは…?そんなアドバイスをする間もなく、雨の中出て行ってしまった。


夕方、スーパーの袋にタプンタプンとすごい量の水を持ってきた。穴をあけてぽたぽた垂れている下に口をあけて飲みながらのご帰宅。
「お腹壊すよ〜〜!明日運動会でしょ!」とたしなめる私に、
「10回以上ろ過したから大丈夫!」と得意げな子ども達。
10回以上ったって、ぼろ雑巾……


どうやら彼らは一戸建てのおうちに住んでいるお友達の家まで行ったようだ。雨が少ないから、屋根がある家なら雨どいを伝って沢山の雨水が採取できるからだと言っていたが、よく思いつくなそんなこと。
そのお友達も、同じドブ川仲間だが彼は秀才風。彼がお稽古に行っていて不在なのに勝手に玄関先で遊んでいたというのだからあきれる。


「この水、飲んでもいいでしょ!」
すでに沢山飲んでるくせに。


どうしても飲むといってきかないので、思い切りグラグラと長時間煮沸した。
見た目は無色透明。においもしない。


キレイなグラスにいれて、コースターにのせて出してあげた。
おいしい!といって飲み干す息子を見て、私もおそるおそる一口いただく。


にがっ……。


その晩、息子はまたまた図鑑を広げて、本当のろ過装置の作り方を調べていた。
雨水とはいえ、子ども達のやることだからどんな汚い水を使ったかわからない。いつお腹にくるかとひやひやしていたが、翌日も、その翌日も子ども達も私もお腹は無事だった。