満月の夜、ドイツ大使公邸で


ドイツ大使公邸での「ダイアログ・イン・ザ・ダーク(DID)を愛する人の集い」にお招きいただきました。
発案者であるハイネッケ博士を迎え、
母国ドイツの駐日大使ハンス・カール・フォン・ヴェアテルン氏が
公邸でホストをつとめるという素敵な会です。


会場には、DIDでアテンドをされている視覚障害の方や盲導犬
様々な立場の人、様々な国の方が約150人も集いました。
為末大さんや、東ちづるさんもいらっしゃいました。

大使や、ハイネッケ博士がスピーチをされる横には
ドイツ語の通訳者、英語の通訳者、日本語の通訳者、
そして手話通訳者の森本先生が並び
参加者の間に、同じペースでそれぞれの言語が伝わります。
なんだかオモシロい。


ハイネッケ博士は、ディズニー映画に出てくるキャラクターのようにユニーク。
ハイネッケ博士をはじめ、お話しした外国の方はみんなご自身の名前を指文字(アルファベットのね)で自己紹介してくださるのです。
更に、挨拶や簡単な言葉の母国語の手話を知っていて
「“難しい”って、フランス手話はこう表現するけど日本ではどう表現するの?」
「ドイツで"名前"はこう表現するけど日本は?」
などと、
まるで「聞こえていても簡単な手話を知っているのは当たり前」
とでもいうかのようです。
ドイツ大使でさえもです。
ダイアログ・イン・ザ・ダークは、真っ暗闇を経験することで
見える、見えないというバリアを抜けて、対等な立場で向き合う経験ができます。
「健常者が、視覚障がい者に助けられる」という共通の体験をされている方々だからでしょうか。
こんなあたたかな空気を生み出せるダイアログは今後、
視覚障害だけでなく、
「聴こえない人がアテンドする世界」や
「70歳を超えた方がアテンドする世界」
へと展開されていくことでしょう。
ドイツやイスラエルにはすでに存在するそうです。
海外では、課外授業やカリキュラムにDIDがあるとか。
子どものころから、色んな人と出会い、対話を重ね、多様な価値観を体験することはとても大切。
日本ではいちはやく佐賀県知事山口祥義さんが、
地元の小学生にダイアログ・イン・ザ・ダークを体験させようという試みを始めています。


アテンドの方々による演奏や歌のパフォーマンスは圧巻。
フルート演奏では、
途中で手拍子を誘うために足を踏み鳴らしてくれます。
聞こえない私でも分かる合図だわ!と思ったのですが、
そうか彼は手も口もふさがってるからなのよね。
フルートもピアノも歌も
会場の空気がふるえ、人々の心と響きあい、共鳴し、目が離せませんでした。
森本先生の手話通訳のおかげで「音楽のちから」を改めて思いだしたひととき。


お招きくださった志村真介さん、季世恵さんご夫妻は
前日、真っ暗闇の中で結婚式を挙げられていました。
そんな嬉しい報告もあり、
国や文化を超えて、愛と幸せに満ちた豊かな時空感。
喜世恵さんの後ろでスピーチのメモを確認する真介さんの姿からも愛が溢れ
二人のまわりはいつも明るくていつもあったかい。
世界中がこんな空気で満たされたらと願わずにはいられません。
満月の美しい夜。

▼ダイアログ イン ザ ダークhttp://www.dialoginthedark.com/