対話と議論から生み出すユニバーサルデザインin成田空港

成田空港の案内カウンターに手話や筆談で対応できることを示すマークや
音や声を聴こえやすくなるスピーカー「commuoon」が設置されていました。

新たに設置されたエレベーターには
「SOSボタン」があり
音声対応ができなくても
「押し続けると係員が駆けつける」仕組み。
SOSボタンの下のパネルに
「係員が向かっています」と文字表示されます。

成田空港ユニバーサルデザイン推進委員会の取組み別ミーティングが11回目となりました。
成田空港では2020年に向けて誰もが利用しやすい空港にするべく大規模な改修工事が進められています。
同時に月に1〜2回のペースで「ほぼ丸一日かけて」対話と議論の場が設けられています。
参加者は、車いす使用者、視覚、聴覚、知的、発達、精神、色覚障害当事者や関係者と
交通、建築、サイン、情報など多岐にわたった有識者たちで構成。
テーマは、サイン、案内カウンター、音環境、空間デザインなど細分化されています。
それらを反映させ、出来上がったものは現地に行って確認し
再び議論する機会も設けられます。


冒頭で紹介したエレベーターの「SOS」ボタンの説明文ひとつにしても
様々な文例を比較し
非常時でも誰でも理解しやすいようにと

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非常の時に押してください。
係員に連絡できます。
押し続けると係員が来ます。

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とシンプルな表記になりました。


空港側の事業者と、当事者や専門家たちが互いに納得できるまで
歩み寄るための対話と議論を繰り返すのがこの委員会の特徴。
だから毎回参加する前には、私自身も質問事項、意見や提案、その根拠などを
整理しメモを作成して臨みます。
準備は大変ですが、私にとってはとても楽しみな場なのです。


もう一つの特徴といえば
成田空港側のスタッフと参加者が対立するのではなく
共に歩むチームワークのようなものを感じることです。
朝から夕方まで時間をとるので、昼食をはさみますが
この昼食時、何人かのスタッフたちも一緒に食べているのですね。
「同じ釜の飯を食う」。
まさにそんな感じなのです。
だから対立せず、常に建設的な対話ができる信頼感ができたのだと思います。


社会の中で数多く存在する委員会や審議会などの議論する場で、
多様な当事者を交え、
ここまで丁寧に時間をかけることは少ないと思います。
世界トップレベルのユニバーサルデザイン水準を目指すための本気度が伝わります。


毎回ミーティング開始前には、
音声認識アプリUDトークQRコード
スタッフがひとりひとり回ってスキャンしてもらう光景もおなじみとなりました。
情報保障として手話通訳がありますが
一日かけての議論なので、手話通訳を見続けることに疲れたときなど
文字通訳で確認をし、両方活用しています。
ここでは、発言時は挙手し、名前を言い、分かりやすく話すという
「話し合いのルール」が徹底されているので、認識率も抜群なのです。

建築関係の専門的な言葉もビックリするくらい正確に表示され
いつもおどろきます。

公共の施設って、出来上がったものの評価だけに注目されがちですが
ユニバーサルデザインとは、出来上がっていくまでの
「当事者参加型のプロセス」もまた同じくらい大切なのです。
<成田空港ユニバーサルデザイン基本計画>
https://www.naa.jp/jp/20180417-UniversalDesign.pdf