2022年を最終目標の年として、すべてのCMに字幕付与が可能に。

【2022年を最終目標の年として、すべてのCMに字幕付与が可能に】
(9/18字幕付きCM普及推進協議会「字幕CM普及のロードマップ」より)
日本民間放送連盟日本アドバタイザーズ協会JAA)、日本広告業協会(JAAA)
それぞれが利害関係を超えて協議をしてくださったおかげです。
それらを後押ししてくださった総務省聴覚障害の仲間たち、プロジェクトメンバー、関わってくれたすべての皆様に心から感謝を申し上げます。
テレビ番組の字幕は増えていくのに、CMにはなぜ字幕がないんだろう。
そんな素朴な疑問を持ったのはメディアデザインを学んだ大学生の頃。
「ヒット商品はCMが生み出す」。
人気のある俳優やアイドル
耳に残るメロディーや美しい景色
心に響くキャッチ・フレーズ
CMは沢山の人の心をつかむために、様々な工夫が凝らされています。
なのに、聞こえない私たちには伝わってこない寂しさ。
 
2006年より、国際ユニヴァーサルデザイン協議会「CM字幕プロジェクト」にて
「CMにも字幕を」と仲間と共に本格的な活動を始めました。
広告主、広告代理店、放送局、制作会社、総務省などに働きかけましたが
CM字幕の必要性が知られていないこと、予算や設備などの環境整備、法整備などの課題が見えてきました。
「CM?見ればわかるでしょ?」とけんもほろろ
そこで、ニーズ調査をしたり、関係団体との情報交換や勉強会やセミナーを繰り返し
地道な活動をする中で、当事者団体も含め応援者が増えていきました。
2010年、パナソニック株式会社が日本初の字幕付きCMに挑戦。
総務省、ライオン、花王と後に続きます。
2014年、総務省が「CM字幕検討会」を立ち上げ国の検討事項となり
冒頭のロードマップを発表した「字幕付きCM普及推進協議会」が発足
2015~2017年、一社提供枠だけでなく複数社提供枠でも字幕付きCMのトライアル放送が可能となり少しずつ増えていきました。
当時熱心に協力をしてくれた花王株式会社が総務大臣賞を受賞されたのも大きな後押しとなりました。
2018~2019年、私たちはCM字幕のアンケートを行い1,247名もの回答が得られました。
CM字幕関連の調査では非常に大きな回答数です。
オリパラ開催国として、オリパラ関係のCMを知りたいという声が多くありました。

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10月13日に開催された「第6回字幕付きCMセミナー」では
これまでの取り組みと、アンケート結果をもとに、
CM字幕の現状「0.3%」という数字の紹介もしました。
2020年現在、ローカル局も含めて約600の番組が放送されています。
その中で、字幕付きCMを放送しているのは22番組。
主な広告主282社中の15社が字幕CMを放送しているだけで、
その実施率を計算すると「0.3%」となるのです。
この現実を知っていただき、0.3%を少しでも大きくするために
生活者の声を共有し、みんなで考えていきたいと伝えました。
「誰も取り残さない社会づくり」をリードする役割が放送にあるからです。
それがSDGsの理念、持続可能で多様性と包括性のある社会の実現につながるからです。
そして最後に、こうも付け加えました。
「言語である手話もあり、字幕もあるテレビ番組、CMの放送を期待しています」と。
セミナーはオンラインで開催。
総務省地上放送課・金子裕介課長補佐からは「これまでの視聴覚障害者への放送政策」について。
JAA電波委員長であり、字幕CM普及推進協 運営委員長の小出誠氏からは
冒頭の「字幕CM普及のロードマップ」について丁寧な説明が。
これまで何度も「できない理由のひとつ」であった
字幕の文字が次のCMにかぶさると放送事故となる懸念について
「CMの映像と音声が流れていれば放送事故とは考えず、補償は求めないことを申し合わせました」と
小出さんはきっぱりと、でも熱のこもった口調が印象的でした。
CMの放送では、はじめと終わりの1秒ずつ字幕表示がカットされる信号があるため
そのような放送事故はほぼ100%発生しないのです。
技術の高さへの信頼を前提とした申し合わせです。
このロードマップ説明を受けて、
民放連・永原伸専務理事 字幕CM推進協 運営委員は
「3団体がこぎつけたロードマップ。これから字幕付きCMが増えてくると、
新たな課題も出てくるはず。それをしっかりと検討し、着実に進めていきたい」と
今後の期待と決意を最後のあいさつで締めくくり、終了となりました。
講演者3人で1時間15分。
オンライン開催で申込者数は600人を超えたと聞き驚きました。
昨年までの対面では340人でしたから約2倍。
全国から参加できるのがオンラインのメリットでもあるのでしょう。
CMに字幕をつけられない理由が長い時間をかけて、ひとつふたつとなくなっていきました。
現在22社の広告主が字幕付きCMを放送していますが
今後は、もっと増やしていくための方策が必要になってきます。
引き続き、応援していただけると嬉しいです。
 
以下は印象に残ったアンケートから。
〇今回のセミナーの中で松森さんの講演が一番刺さりました。字幕CMの必要性を強く感じました。字幕付きCMがSDGsの実現にもつながり、企業価値も上げると理解できた。
〇「情報格差」という言葉の解像度が上がったと感じました。
聴覚障害がある人も消費者として情報に触れることができるよう、
字幕・手話が当たり前に選べる環境になるといいなと思います。
2019年からのアンケートはとても貴重な情報で、勉強になりました。
〇松森さんの取り組みが、長年にわたることに驚いた。
また、聴こえていた時のCMソングの記憶が時を経た今も記憶に残っているという話は、とても印象的だった。CM字幕普及させ、聴覚障害や難聴の方にも商品・サービスの情報をしっかりと伝えることが、新たなマーケティングになるという点も、自分自身、今までそういった発想がなかったので新たな気づきだった。情報取得の格差ということも、こういった技術でよりフラットにすることを目指せるのであれば、やはりこれから着実に推進していくべきだと思った。
〇非常に説得力のあるご講演でした。
「マイナスからゼロになる」とのご指摘は胸にささりました。
〇短時間の中で、大切な情報をわかりやすく、また具体的にご説明いただき、大変ありがたかったです。
アンケート結果の見せ方も大変分かりやすく、字幕放送と消費行動との関係性を知れたことは、大きな収穫となりました。この情報を、周囲にも伝えていきたい
〇大変な状況ながら懸命に各団体に働きかけを熱く行っている松森様に敬意を表します。
必要としている人の中には、現状をご理解されず過激に主張される人も多い中、松森様は現状を良く分析理解され、解決策を一緒に探って向上していこうとする穏やかな方針なので共感いたしました。
〇22年に向けての感謝の言葉をいただき、採用広告主数の増加を図らねばと身が引き締まる思いでした

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