清新ふたば小学校「読書科」での対話型授業

東京都江戸川区清新ふたば小学校5年生の読書科の授業で
拙著「音のない世界と音のある世界をつなぐ」を活用して頂きました。

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「読書科」とは生涯にわたって主体的に学び続けていく
資質・能力の育成を目標とし
平成24年度から江戸川区で実施する全国初の取り組みです。

5年生約80名3クラスの発表を聞き、対話型の授業を実践しました。
この授業は2月から3月にかけて行われ
総合的な学習の時間の「災害」の学習と関連させ、
まずは全員が第一章「静かな大惨事ー音のない世界から」を読みます。

ここには、東日本大震災の時の私の体験や
危険が聞こえないということについて、
宮城県立聴覚支援学校の中高生の体験談などを紹介しています。

それらを全員が読んだうえで
①知ったこと②気付いたこと③考えたこと④できること
この四つを曼荼羅チャートを使って発表するのです。

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お母さんと一緒に手話を勉強することにしたり
テレビの字幕を出して見たなど様々な気づきを行動につなげている様子が分かりました。

どのクラスでも、「コミュニケーション手段をひろげる」
というキーワードがが出たので
ボディランゲージだけで伝えあってみたりしました。

「自然の音を聞くことができないのが残念」という発表には
「好きな自然の音は何?」
「それを私に伝えてみようか」
「みんなも考えてみて」と
そんなやりとりから、
生徒自身が木となって両手を広げて揺らしながら「木々のざわめき」の音を教えてくれたり
小鳥のさえずりを教えてくれたのも印象的でした。

それぞれの感じ方、伝え方が違うと理解したうえで、
どうすれば共有できるのかみんなで一緒に考えていくのは、楽しい。

読書を習慣としている子どもたちの言葉はとても豊かで
だから、身体や表情で伝える表現方法も柔軟だと感じました。

 

また、先生方が「待つ」ことを大切にしているのも印象的でした。
生徒が回答するのに時間がかかっても先回りすることなく
安心して考えられる時間と雰囲気があるのです。
一人ひとりの力を信じて、大切にしているからこそ。なのですね。
どのクラスも、深い対話の時間となりました。

 

終了後に、感想文集が届きました。
小学校5年生の「じぶんのことば」…どれも胸にしみます。

思ったことを言語化する力の高さを感じ、「読書科」の取り組みが
全国で広まるといいなと思いました。

・自分はこの読書科の授業で「音のない世界と音のある世界をつなぐ」に出会いました。自分自身本を読むことは好きで、さまざまなジャンルの本を読んできました。
今回読んだこの本は自分にとってとても考えさせられました。
なぜかというと、この本の3章の「普通」についてです。
自分はここを読んで自分の普通ってなんだろう?と考えました。
そうやって考えているとある答えにたどり着きました。
それは……みんな一人一人の「自分らしさ」ということです。
これはこの本の3章の11行目の最後のところに書いてあった言葉です。
自分はこの言葉に、確かにな、と感じました。

・ぼくは、松森さんの「音のない世界と音のある世界をつなぐ」を読んで
心にのこった言葉は
『「できない理由」ではなく「できる方法」を見つける』という言葉です。
今迄は『できない理由』を考えてあきらめることが多くありましたが
こんどからは『できる方法』を見つけて、ためしていきたいと思いました。

・私は松森さんの本を読んで、考え方が広がりました。
最初、私は障害者は可哀そうな人だと決めつけていました。
けれど松森さんの本を読んで、私たちにとっての「普通」と
相手にとっての「普通」がちがい、
それぞれの損得や幸せがあることを知り考え方をひろげることができました。

・松森さんから学んだことは数えきれないほどありました。
その中でも私が一番心に残ったことを書きます。
1つ目は、どんなことでも最後まであきらめずにやることです。
私はこのことから、あきらめないでやりきったのに失敗しても、
必ずどこかで「せいか」が出るのかなと思いました。
2つ目は相手の話に「共感」することです。
共感するということは相手の気持ちを考えることができたり、
相手を思いやる気持ちができるのでとても大切だと私は思いました。

・松森さんの話を聞いて、自分を好きになろうと思いました。
生きようと思いました。松森さんはいつもえがおでかがやいていて
それがすごくうらやましかったです。
自分を大事にしよう、好きになろうと思いました。

・松森さんが聞こえない世界をはなしてくれたりしたおかげで
物の見方を変えたり、相手の立場を考えたりなど、
生活の中でいろいろ変わりました。
本当にありがとうございます。

・松森さんのお話を聞いてたくさん学んだ事があって、みんなへの接し方が
とてもていねいに話していたり、ずっと笑顔だったからすごいなぁと思いました。
松森さんと出会ったからこそ、手話を覚え始めたし、
もっと障害のある人と話したいなぁと思いました。

4月から6年生となり、さらに共生社会ということに軸を置いて
「自分たちができること」「自分たちはどのように関わっていくべきなのか」などを
考える学習につなげていくそうです。

教室の中での授業でも、ひとりひとりが「思考すること」で
どこまでも果てしなく世界が広がっていくことを感じました。

江戸川区教育委員会 読書科・読書改革プロジェクト>
https://www.city.edogawa.tokyo.jp/kosodate/kyoiku/kyouiku/tokushoku/dokusho/index.html

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付箋が沢山張られた生徒の本。

<音のない世界と音のある世界をつなぐ~ユニバーサルデザインで世界を変えたい!>
https://www.amazon.co.jp/97/dp/4005007767