停電が奪うもの

karinmatasumori2011-03-16

停電は聴覚障害者のコミュニケーション手段を奪う。
視覚情報がすべての聴覚障害者は、真っ暗な中では、手話も、読唇も、筆談もできないからだ。
若いときであれば、手探りまさぐりコミュニケーションもまた楽しかったが、今はそんな場合ではない。
被災地で、電気が届かない状況の聴覚障害者は、さぞかし不安な思いをしていることだろう。

私たちの地域でも、輪番停電が始まった。
初日こそフライングしたが、昨日の夜、今日の夕方と暗闇に包まれた。
夕食はあらかじめ用意しておいたので、ランプの明かりで食べたが息子いわく
「キャンプの味がする!」
確かに。笑


わずかでも灯りがあって、相手の表情が見えることがこんなにも大切だなんて。
スイッチを押せば灯りがつくこと、蛇口をひねれば水が出ること、「普通の生活」のありがたみを、今皆同じ思いで共有しているのだろう。
わずか2〜3時間の停電でも不便は多いが、家を失い、家族の安否も分からないままの被災地を思えば受け入れられる。


「普通の生活」をしていた人々をあっというまに飲み込んだ大津波の映像。情け容赦なく流れていく家や車。
あの中に、あの車に、誰かがいるんじゃないだろうかと息も止まる思いで見ているしかできなかった。
未曾有の自然災害になす術もない小さな人間という存在。
一方で、人的支援の輪も広がっている。


避難所のろう者への支援方法が、厚生労働省から文書が出されているという。
http://blog.goo.ne.jp/jfd-q-mimi/e/8d6f977f7cda8f82eb09d49076ad7247
・安否確認の時には「聞こえない人はいませんか?」と書いたプラカードを掲げる。
・手話通訳者、要約筆記者は見て分かるように腕章などをする
・食料や救援物資の際にはプラカードやホワイトボードを出す
など、具体的な方法が記されている。
これに加えて、聴覚障害者自らが自分の存在を周囲に知らせることも必要になってくるのだろう。


報道関係者や、新聞記者も、被災地の聴覚障害者の様子に目を向け始めてくれている。NHK教育テレビの「福祉ネットワーク」(20時〜21時)には、手話通訳者が大きく映し出され、字幕も一緒に出ている。
避難所生活を強いられている聴覚障害者に正確で素早い情報が、全国の聴覚障害者にその現実が、見えるようにくまなく届くことを祈り、できることをしたい。