年頭の社長説示に手話通訳

「社長説示に手話通訳がついたよ!」
嬉しそうに報告してくれたのは、花王株式会社に勤める聞こえない友人。


仕事始めの日、社長による年頭の挨拶がある企業は多いのではないでしょうか?
企業によっては、Web会議やテレビ会議システム等を使って、国内外の支店等に映像と音声をリアルタイムで配信しているところが多いと聞きます。
トップの声を生で聞くことで、社長の思いが一人ひとりに伝わり、社員として同じ思いを共有できる貴重な機会です。
聞こえないみなさんへの配慮はありますか?


花王株式会社には、聞こえない友人が数名勤めておりますが、昨年の社長説示では字幕がつきました。
そして今年は手話通訳をつけることにチャレンジしたのです。


実際に見た方の話によると
「社長の講話中、壇上のすみに別のカメラ(及び手話を必要とする方)を向いた手話通訳がいて、
TVのように画面の社長の肩のうえあたりに、マルが出て、その中に手話通訳が映り込む感じでした」


ワイプで手話通訳を埋め込む形式ですね。
これを見て、「大きな一歩だと思った」そうです。


同じように中継を見た聞こえない社員は
「はじめて社長の話が最初から最後までわかり、とてもうれしかったです!」と報告してくれました。
別の聞こえない社員は
「長年勤めてきて良かった!」とも言っていました。
嬉しかっただろうなぁ〜!!わかるよ!


大きな会社ですから、当然聴覚障害者もいることでしょう。
あらゆる社員に情報を伝えるということ、簡単そうで難しいのが実情です。
「聞こえないから仕方ない」と我慢をしている人が多くいるのです。


花王株式会社は、2011年ユニバーサルデザインをテーマとした講演の中で
花王さんのCMに字幕をつけてほしい」ことを話すと、
即座に広告の責任者が
「我々のCMが伝わっていない人がいるという事に衝撃をうけました。
明日からCMに字幕をつけるプロジェクトを立ち上げます。」
と宣言し、数か月後には本当に実行したという逸話があります。


聴覚障害者」の存在に気付き、「情報を受け取れない人がいる」という課題を提起し、少しずつ社内に理解を広めていってくれた方々の存在がありました。
どんなに担当者が興味と熱意をもっていても、社内の理解が得られず苦労し、頓挫してしまうことも多くあります。
しかし、トップがきちんと理解を示せば、それはCM字幕にとどまらず、社内の情報保障や職場環境の変化にも繋がっていくのだと思いました。



「大企業の社長説示に手話通訳がつく」
社外にはなかなか知られないことですが、良い事例はどんどん紹介し、他企業に広がっていくといいと思います。
今回は、ワイプ方式だったこともあり、
「手話通訳が小さかったのと、映像が途中で止まったりスムーズではなかったので、次はもっと見やすくなるように提案してみる」と言っていました。
嬉しかったことに対して感謝の気持ちを伝え、もっとこうすると良くなる、と提案する。
大切なのは、お互いにとって良い方向に、建設的にもっていくこと。
これがより良いものを目指す「ユニバーサルデザインのスパイラルアップ」につながるのです。
来年は社長の横で手話通訳し一緒の画面におさまる、そんな企業がぐんと増えてるといいな。