歌舞伎座の字幕ガイドがなくなってしまった件。

【また逆戻り?コロナ前に退化ではなく進化を】
海老蔵さんを2列目の席で観られる!
今回誘ってくれたカヨコさん「見える」ことが大事な私たちのために
最高の席を用意してくれたのです。感謝!
團菊祭5月大歌舞伎の第二部、演目は「暫(しばらく)」と「土蜘蛛」。
 東銀座の歌舞伎座は「字幕ガイド」があるので
至近距離で海老蔵を字幕で楽しめる!!!と
暫くぶりの歌舞伎座、鼻息荒く到着したものの
「字幕ガイド受付」が見当たらず…。
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「字幕ガイド」とは株式会社イヤホンガイドが提供している字幕サービスで
タブレットに日本語で分かりやすく説明する「解説チャンネル」と
台本をそのまま表示する「台本チャンネル」
海外のお客様向けに「英語チャンネル」の三つが選択できるもので2013年から始まったサービスです。
<松森果林/2013-05-07初めての歌舞伎座
https://karinmatsumori.hatenablog.com/entry/20130507------
スタッフにたずねると、字幕ガイドの貸出は中止になっているとか。
理由を尋ねると「コロナ禍で予算の問題で…」と。
コロナ禍の集客不足や収入減は分かるのですが
こちらも16,000円という予算を投じているわけです。
現在は「音声でのイヤホンガイド」のみ貸出しているとのこと。
「予算の問題」は運営側の都合で
お客さまが不利を被るものではありません。
コロナ前には当たり前にあったサービスが、コロナ禍でまさかの中止なんて。
対応してくれたのは株式会社イヤホンガイドの方で、
ここまできて、台詞が全く楽しめない状態で観なくてはならないの?
イヤイヤホントなんとかなりませんか?
せめて台本の貸出でも、と
「一緒に考えてほしい」と相談をし、きちんと耳を傾けてくれたのですが
台本は松竹側の管轄、
松竹のスタッフは見当たらず、連携ができていない様子。
株式会社イヤホンガイドのスタッフの力ではどうにもならず
払い戻しなどの提案もできず、
筆談でのやり取りに時間がかかり間もなく開演。
「きちんと話をしたいので終了後に松竹のスタッフともお会いしたい」と約束をし着席。
着席したものの、先ほどのやり取りだけでもエネルギー消耗。
なんだかモヤモヤしつつ聞こえない私たちのテンションだだ下がり。
台詞が一つも分からない約3時間。
パンフレット広げてあらすじを把握するのみ。
前から2列目の席から観る海老蔵、確かに大迫力でしたが。
名台詞「暫く暫く~」が分からない。
2列目の至近距離でオペラグラスで海老蔵で鼻の頭の汗まで観察する私たち。
大太刀振って敵の首がゴロゴロと床に転がり落ちる演出
土蜘蛛の蜘蛛の糸がぶわっと広がる演出など
見た目での楽しみを探そうと必死。
暫く暫くな演目が終わり、ロビーに出てみると
先ほどの株式会社イヤホンガイドのスタッフと
松竹株式会社の歌舞伎座劇場運営の方がおりました。
コロナ前は字幕ガイドを借りて何度も楽しんでいたのに
・暫くぶりにきたらサービスの中止で落胆したこと
・その理由が「コスト減のため」というのは納得できないこと
・鑑賞当時、その様な案内はHPでは見当たらないこと
・代替方法がないこと
・結果的に台詞のひとつも理解できずに本当に残念な思いをしたこと伝えました。
そのうえで、以下の提案をしました。
① 字幕ガイドの貸出再開
② 再開までは台本の貸出対応
③ それらをHPで案内
そして具体的な対応が決まったら連絡がほしいことも約束していただきました。
聴覚障害者の中にも歌舞伎のファンは多いし
特に字幕ガイドのサービスを高く評価していたことや
サービスが再開したら、聴覚障害者にも広くお伝えしたい、そんなことを話しました。

一緒にいたカヨコさん
「私は聞こえるけれど、字幕ガイドがあるから聞こえない友人と
一緒に楽しめると思って二人を誘った。ところが字幕ガイドが中止になっていて
残念だし、自分も申し訳ない気持ちになる」と
聞こえる立場からの話もしてくれて、どんなに嬉しかったことか。
こんなとき、残念で悲しい思いをするのは障害のある本人だけでなく
一緒にいる友人や家族も、同じ思いをするのです。
こうした場面で、ひるむことなく
建設的な対話を一緒に楽しんでくれる佳代子さんが心強い。
おりしも2022年5月に「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」が
施行されたばかりのタイミングですから
松竹側がきちんと対応することで、社会的な影響も大きいはずです。
その後何度かメールでの建設的対話を重ね
「字幕ガイドの再開に向けて株式会社イヤホンガイドと話し合い
検討を重ねているが、諸般の事情のためすぐの再開が難しいこと。
でも、歌舞伎座ご観劇の一助に少しでもなればと
6月公演より上演台本の貸出しを提案したい。
希望する場合は、観劇時に1階案内所にお立ち寄りください」
という内容のご返事をいただきました。
松竹グループの経営方針「時代のニーズをとらえ」
障害のあるなし関係なく、あらゆる人に楽しんでもらえる
歌舞伎座であってほしいと今後に期待しています。
コロナ以前、オリパラに向けて様々なおもてなしやサービスが実現しました。
これまで当事者たちが長い時間をかけて
要望や提案を繰り返してきたことが
実現していく喜びは大きなものでした。
しかしそれらがコロナ禍で中止になると、これまでの積み重ねが
ゼロに戻り、当事者たちはまた1から提案し直さなくてはならなくなります。
エネルギーもモチベーションもいることです。
歌舞伎座の字幕ガイドだけでなく、
劇団四季の「字幕グラス」貸出サービスもそうでした。
こちらは、9月よりやっと一部再開です。

https://www.shiki.jp/navi/news/renewinfo/034522.html

コロナ禍を経て、退化ではなくより良いサービスに向けて
進化させていかねばと思うのです。
そういえば、東京オリンピックの開会式では海老蔵
「暫く」のキャラクター鎌倉権五郎として登場し、
豪快な衣装で出で立ちを世界に向けて披露したのでした。
「し~ば~ら~く~!」と海老蔵の大音声とともに
こんな社会の理不尽さを、にらみとともに吹っ飛ばしてほしい。