山のてっぺんで

富山でのお墓参りを終えた翌日、日曜日は越後湯沢に寄って一泊。

「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」

川端康成が、この誰もが一度は聞いた事のある出だしで有名な「雪国」を書いたという宿、高半に泊まった。
とても情緒のある宿で、女湯のみ露天風呂がついている。小さな頃から温泉街で育った私は、温泉には目がない。
一度入ると長いし、一日に何度でも入りたくなる。

こんな温泉宿での浴衣って、着脱が楽チンで本当にベンリだ。


宿で温泉を堪能した翌日。
近くの湯沢高原へ、ゴンドラに乗り山の中腹までひとっとび。
そこから、高山植物を眺めながら軽いトレッキングなどをして初夏の緑を楽しんだ。
天然記念物のモリアオガエルの卵が、あっちこっちに泡状になってかたまっている。
水辺にはでっかいイモリ。お腹の鮮やかなオレンジは久しぶりに見た。
山のてっぺんで子どもたちは「やっほ〜〜〜」などと叫んでいる。
さわやかな空気を目一杯吸いつつ休憩していると、突然携帯メールが入った。
マンションのお友達だ。


「もうみんな集まっているけれど、大丈夫?忙しいのかな?」


え??
は??


この友人とは、お墓参りの旅から帰宅した翌日、火曜日に数名でランチの約束をしていた。その日は月曜日。たしか、九日は明日のはずなんだけど・・・???


・・・・・・九日、今日じゃん!!!!!



新緑のさわやかな空気は、私の周りだけ一瞬にして凍りついた。


あろうことか、九日を火曜日だと思い込んで約束をしてしまっていたのだ。
明日はランチ♪とばかりに、お茶請けのお土産まで買っていたのに。

ひたすら友人たちにお詫びのメールをいれるしかなかった。


こんなうっかりボケをかます自分に、ほとほとあきれて言葉も出ない。
山のてっぺん。子どもたちと一緒に叫びたい。
「バカヤロー!」というかんじか。


その後、そろそろ下山しようというころ、突然雲が立ち込めて大粒の雨と雷が鳴り響いてきた。
ゴンドラは雷に弱いとかで、しばらく運行休止となってしまった。


30分ほど待っても運転再開のめどがたたず、雷もなりやまず、ゴンドラの会社からバスを出してくれることに。


松森ご一行様10名で、貸切だ。
子どもたちは喜んでいたが、車酔いしやすい私はまさに地獄の下山。
道路に出るまでの15分くらいはでこぼこの道なき山道。
ゴンドラで7分なのに、バスだと30〜40分・・・・


山のてっぺんでは何が起こるか、本当に分からない。