内閣府 障害者政策委員会の委員に就任について

今日はちょっと真面目な話題を。
このたび、内閣府の障害者政策委員会の委員に就任しました。
障害者政策委員会というのは、2011年8月に改正された障害者基本法に基づき、障害者基本計画の策定・変更に当たって調査審議や意見を出すとともに、計画の実施状況について監視や勧告を行うための機関として、内閣府に設置されたものです。


主な任務は三点。
1つ目は障害者基本計画の策定に関する調査審議・意見具申。→こちらは昨年策定済。
2つ目は障害者基本計画の実施状況の監視・勧告。
3つ目は害者差別解消法に基づく基本方針に関する意見具申。


委員は障害者、障害者の自立及び社会参加に関する事業に従事する事業者並びに学識経験のある者から30名以内で任命されます。

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法律第33条:政策委員会は、委員三十人以内で組織する。
2 政策委員会の委員は、障害者、障害者の自立及び社会参加に関する事業に従事する者並びに、学識経験のある者のうちから、内閣総理大臣が任命する。
この場合において、委員の構成については、政策委員会が様々な障害者の意見を聴き障害者の実情を踏まえた調査審議を行うことができることとなるよう、配慮されなければならない。

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任期は二年。
前期が5月にいったん終了し、委員の改選がありました。
各障害者団体や事業団体からの代表などが名を連ねていますが、今回は学識経験者や女性の登用、比較的若い年代の登用が多くなったようです。
私はどんな立場で任命されたのか?
それは、ユニバーサルデザインを専門に実社会の中で働いており、障害があり、女性であり、子育てをしている母であり、主婦でもある。
多様な視点を持ち合わせつつ、生活感もあるという立場での任命です。


任務について、簡単に述べられることではないのですが私なりにまとめてみました。


障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策を図るために、施策の基本的な方向を示すことです。
障害者差別解消法は2つの大きな柱で構成されています。
1、障害を理由とする不当な差別的取り扱いの禁止
(障害を理由に必要なサービスの提供を拒否するようなこと)
2、合理的配慮の不提供の禁止
  (必要な配慮、たとえば筆談や手話、音声読み上げ、段差解消の渡し板など)
これらは、国の行政機関や地方公共団体等、及び民間事業者は法的義務として禁止されています。
一方で、合理的配慮については、障害によって求められる配慮も多種多様であるので、国の行政機関と地方公共団体等は法的義務を課し、民間事業者においては努力義務となっています。
ただし、ここには「合理的配慮に伴う負担が過重である場合は義務は生じない」ともあります。


「差別は悪いこと」というのは誰もが分かっていることだと思います。
でも、何が差別にあたるのか、差別の対象者となるのは誰なのか?そういった細かい疑問を投げかけると答えられる人は少ないでしょう。
「差別を受けたことある?」と尋ねても、ピンとこないことでしょう。
たとえば私の事例で言えば、息子が幼少期、親子で一緒に楽しめるベビースイミングに入会に行ったとき、息子は聞こえても、母親の私が聞こえないという理由で、断られました。
これを差別とするのであれば、差別の対象者となるのは、聞こえない私だけでしょうか?
その時に傷ついたのは、私だけでなく、一緒にいた息子も私以上に傷ついたかもしれません。
つまり差別の対象者となるのは必ずしも、当事者だけとは限らないということです。
また、このときに私が求めた配慮、たとえば筆談での対応や、分かりやすく合図をするなどはスタッフにとって「過重な負担」となるのかどうか、等。


さまざまな意見や考え方があると思いますが、どれをとってもあいまいなものです。
だから、「どんなことが差別となるのか」、「対象者はだれなのか」、「配慮とは何か」、「過重な負担とはどこからどこまでを言うのか」、そうした基本的な考えを少しずつ明確にしていくこと。施策全般にわたる対応方法や、作成に当たっての留意点、支援方法に関する基本的な考え方などを、議論していくのがこの委員会だと思っています。


この任命打診をうけたとき、一度は辞退を考えました。
政策に関しては全くの素人だと、誰よりも自覚しているからです。
私よりも適任者が沢山いるはずです。
一方で、沢山の国民の中から任命いただいたというのはとても光栄なことでもあります。
相当悩みました。
本当に悩みました。


でも、
これまでどちらかというと男性目線で進められてきた審議や議論に、生活感のある女性が入ることで、視点を広げることができるのでは…と思うのです。
また、私は中途失聴であり、障害のない世界と、障害のある世界、両方を経験し比較することができるという立場でもあります。
それらを自分の言葉で説明をする力も持っています。
この政策に、将来を担う子どもたちを育てる母親や、子どもの視点、障害のある女性など、多角的で複合的な視点を広げ、柔らかく対応していきたいと思うのです。
私にできることは微力だと思います。
でも、周囲の方々のご指導をあおぎながら、お力を借りて、二年間精一杯努めたいと思っております。
どうぞよろしくお願いいたします。


内閣府障害者政策委員会についての過去の議事録や、初回の動画などは、こちらのHPから見ることもできます。
http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/seisaku_iinkai/