歯医者…眠れるけど笑えない

歯医者の何がいやかというと、

キュイ〜〜ン、ウィ〜〜ン、ガガガガガ……

この、「削る音」だろう。
想像しただけで、背筋が寒くなる。
自分が治療を受けているときの音だけでなく、他の人の治療中の音も聞こえてきて、それがさらに怖さを倍増させるのではなかろうか。

私は、普段は補聴器をつけているが、歯医者に行くときだけは補聴器を外していく。
そうすると、歯医者での治療の音がまったく入ってこない。これは、聴力を失ってラッキーだったことベストスリーに入ると思う。それほどひどくない治療や、麻酔がかかっている場合にはひたすら熟睡してしまうこともあった。
寝てしまうと、自然と口が閉まってしまうために治療の妨げになるので、つっかい棒みたいなのをはめられることもしばしばだ。
こんな話を聞こえる人にすると、とってもうらやましがられるのだ。

とはいえ、振動には敏感。聞こえなくっても、ドリルで削るときの、ガガガ…ガリガリ、ゴキュッゴキュッ、これはもう直に感じるので耐え難いときもある。

先日、親知らずを抜歯した。この親知らず、まだ生えておらず、完全に歯肉の中に横たわっている状態だった。歯医者でのやり取りは、いつも担当の先生が筆談をしてくれるのだが、抜歯についての説明が淡々として怖かった。

1、局部麻酔
2、歯肉を2センチほどメスで切開
3、歯を真っ二つに切断して抜き出す
4、縫合
5、一週間後に抜糸

…おお怖い。
恐怖におののきながら無事に抜歯手術を終え、今日で三日目。
鏡を見て何度も笑ってしまう。
このふざけた顔は何なんだ。リスの頬袋、なんてかわいいもんじゃない。
まるでこぶとり爺さん。
片方だけが、見事に腫れ落ちている。
先生の説明で、腫れと痛みが一週間ほど続くというので講演や会議など、人と会う仕事を入れなくて本当に良かった。
今も鏡を見直して一人大笑い。
だが、ふと思う。
20年後、30年後くらい、今よりもっと頬がたるんだとき、両方ともこんな感じなのだろうかと。
なんだか笑えなくなってきた。