無音の世界に

朝から冷え込んだ休日、息子のサッカー部の練習試合を見に行った。
息子の小学校ではサッカー部があるのだが、一月からは三年生も入部できるようになり、早速毎日朝練、放課後練と励んでいる。
入部して、初めて三年生も参加させてもらえる他校との練習試合だ。


やがて試合が始まる。
コートの中央に集う選手達。
審判の先生がホイッスルを口にすると、選手達は相手チームに頭を下げ、握手を交わす。
一つのボールをめがけて奪い合い、ゴールを目指す子供たちのひたむきな姿。


全員の動きにじっと見入っていた私に、一緒に行った友人が話しかけてきた。


「周りの子供たちの応援や掛け声がすごいよ!」

「ソラ!5番マークしろー!」

「行け行けー!」

「○○ドンマイ〜!」


彼女の手話で語られる、リアルな音声情報によって
それまで騒がしくも無音だった私の世界が一気に臨場感のある豊かな世界に変わった。


子供たちって、こんな掛け声を送ってるんだ!
真剣な顔で叫んでいる様子の子供はこんなことを叫んでいたんだ。


こんなさりげない、
何気ない会話が、
掛け声は、
いつから私の周りからなくなってしまったのだろうか。

聞こえる人にとってはなんでもない音声情報、いちいち教えるまでもないような内容だろうが、私にとってはそれはものすごく嬉しかった。

それらは、私と向き合って本人から語られる言葉ではない、自然な姿の言葉達。
私が知ることができない活き活きとした子供たちの言葉。


教えてくれる友達がいて、本当にうれしい。