なぜ、CM字幕は難しいのか?

おかげさまで、日本初のパナソニックのCM字幕実験放送について、沢山の方からの反響がありとても驚いています。
また、一部の方にはアンケートをお願いしましたがこちらも沢山集まり、ご協力くださった皆さんには心から感謝しております。


「CMってあんなに短いのに何故字幕を入れるのが難しいの?」こんな素朴な疑問も沢山頂きました。
私も一視聴者として最初はそう思っていました。
でも、この五年間、沢山の企業が会員となっているIAUD(国際ユニヴァーサルデザイン協議会)の中でCM字幕を提言し、研究していく中で様々なことが分かりました。

まず、字幕には二種類あることを説明しておきたいと思います。

1、オープンキャプション(OC)
テロップとも呼ばれ、最初から画面に文字が入っているものです。
バラエティ番組などでは、色や大きさ、字体を変えて雰囲気を効果的に表したりしていますね!

2、クローズドキャプション(CC)
地上デジタル放送対応のリモコンには「字幕」ボタンがあり、ここで字幕表出に設定すればボタン一つで字幕を出したり消したりできるものです。
アナログ放送の場合は、字幕表出デコーダーなどの専用機械が必要になります。
テレビの番組表のタイトルの頭に「字」などのマークがついていれば、全て字幕を出して見ることができます。


特別な機械を必要とせず、デジタルアナログに関わらず見られるOCと、ボタン一つで出したり消したりできるCC、二種類あるわけです。
現在、CMでの字幕が困難とされているのはクローズドキャプション(CC)です。


それでは、何故CMに字幕をつけるのが難しいのか?
いくつかの問題があります。


1、CM搬入基準、運用基準の問題

・これまでCM搬入基準にはずーっと、字幕挿入に関して
「CMでは取り扱えません」という一文があったため、CMに字幕は入れられないことになっていました。
けれども、昨年この一文は削除されました。
今後は、字幕挿入に関して、番組だけでなくCMも対象とする基準を作っていくことも検討してほしいと思います。


2、放送システムの対応問題

・通常、番組とCMはそれぞれ専用のサーバーから送出されています。
つまり、
番組バンクからは番組を送出。
 ⇒字幕に対応している
CMに切り替わると、CMバンクからCM送出。
 ⇒字幕に対応していない

これが、現在の状況です。
今後、このシステムを改良していく必要がありますし、局や地方によっても違いがあるので全体を統一して解決していくには費用も時間もかかるようです。

・CM非表示時間の問題
CMに、前の番組の字幕がかぶさると、放送事故扱いになります。
例えば、CMなのに、前のニュースの字幕が遅れていてかぶさるなど。
日本はこうした放送事故にとても慎重です。
そのため、CMの前後一秒間(あるいは0.何秒とか)は字幕が表示できないようになっています。
このズレをどう解消するか?
⇒文字数を要約すると、CMの内容がきちんと伝わらない可能性等でてきますね。

3、スポンサーも放送局もこれまで「CMに字幕」という発想がなかった。
意識されていなかった問題だということです。
こちらは、これまでに何度となくCM字幕の話題を投げかけることで最近はどのスポンサーも、いずれはやらなくてはならないこと、という意識を持ってくださっているようです。
ただ、予算の問題、上記の様々な課題に対応する時間も根気も必要になると思います。


以上三つが大きな理由です。
でも、どれも解決できないことではないと思います。
もちろん、簡単なことでもない。
そんな中で、パナソニックは一歩踏み出す勇気と行動力があって実験放送につながりました。
今後は、他のスポンサーも後を追うかどうか、本当にユニバーサルデザインを目指しているかどうかの真価が問われる時期となるでしょう。

「あたり前があたり前に」
こんなシンプルなことが、実は一番難しかったりするのですね。


今後どんな展開をしていくのか。
いろんな意味で楽しみです!