スライサーにご注意!

その日の私はご機嫌だった。


毎週一回続けている「井戸端手話の会」
http://d.hatena.ne.jp/idobatashuwa/
でのテーマは「気を付けている美容方法」
美容スタッフとして化粧品の販売やエステをやっているメンバーが「冬の肌のお手入れ」など手話でレクチャーしてくれた。
手羽やレバーをとって体の内部からきれいにしましょう。
という一言に皆深くうなづく。
終了後、さっそく手羽先と野菜をたっぷり買い込んで、脂肪燃焼!身体温め!美容抜群!スープをつくろうとキッチンに。


機嫌よく唄いながら
キャベツ用のでっかいスライサーで、玉ねぎを勢いよくスライスしていた。


シャーシャーシャーがりっ!


ガリッ?!



滑るようにスライスしていた途中の違和感。
最初は何か分からず、理解するまでにかなりの時間を要した。
あろうことか、右手中指の先端を思い切りスライスしてしまったのだ。
いつもは、長めの爪が守ってくれるのだがたまたま短くしたばかりだった。
無防備な中指先端は直径一センチほどの断面図が見え
スライサーをひっくり返すと、そこには切れた(というかほぼ切断状態)の指の先端が。
思わず「うわぁ!」と。
これだけでも、気を失いそうになったが、とにかくキッチンペーパー抑えて止血。

右手中指立てた状態で、心臓よりも高い位置に掲げる私。
これだけでもパッと見た目異様な光景だ。
出血がひどく、遠のきそうになる意識を深呼吸で抑え
左手で友人にメール。
近くの外科を教えてほしいと。
渋滞でなかなか動かない道路をタクシーで病院へ向かい、縫合手術。
中指への局部麻酔の痛いのなんのって。
思わず叫んだくらいだ。
あんまりにも痛かったりするとついつい笑ってしまう。
まるで気違いだ。


手術中ずっと見ていていいか尋ね、一部始終を目撃した。
全てこの目で見て確認をしたい私。
自分の身体だもん。
直径一センチの穴を縫いとめるって、皮膚が引きつったりしないだろうか。
「手は商売道具なので綺麗にお願いします!」などと
言って先生に笑われた。
骨の寸前ギリギリだったそうで、無事に終了。


右手が使えないことの不便さ極まりない。
左手で箸を持っただけで、翌日は左肩の筋が痛くなってるし、
洗顔もシャンプーも片手。
トイレもパンツはくにも一苦労。
お茶を飲むにも、洗濯物を畳むときも、右手は中指立てたF○ckYou!状態。
昨日は執念で作り損ねたスープを作った。
失った血を肉を取り戻すのだ。
事故に怪我にと師走らしい慌ただしさ。
今週の仕事は幸いにも会議や打ち合わせ中心なのですべてキャンセルし
ちょっと落ち着いて生活をしようと反省。
かねてから見たかったDVD黒沢明監督の「用心棒」を観た。
久しぶりののんびりとした時間。
これでもかこれでもかってくらい出てくる、刀での殺陣シーン。
これは、刀で斬るときの音を初めて入れた映画なんだとか。
うわあ痛そう。
あれに比べれば指の先端なんか……とはいえこちらもかなり痛い。


今日も右手は中指おっ立てたまま。
手話もままならない。
みんなに笑われつつ
しばらくはファンキーな生活だ。