内閣府障害者政策委員会の報告と思う事


内閣府障害者政策委員会第16回が10月20日に、その翌週
第17回が10月27日に開催されました。
自分の言葉でまとめるのに時間がかかり、報告が遅くなりました。
ちょっと長文です。


「障害者差別解消法」という法律ができ
2016年4月から施行される予定です。
これは、あらゆる人が共に生きる共生社会の実現を目指す法律です。

この法律を、よりよく運用するための柱となる「基本方針」を現在作成中で
その後、対応要領(方法や手段)対応指針(方針)が作成される予定です。


現在作成中の「基本方針」では以下を定めます。

1)差別解消推進施策の基本的方向
2)行政機関等がこうずべき措置の共通的事項
3)行政機関等がこうずべき措置の基本的事項
4)事業者がこうずべき措置の基本的事項
5)その他施策に関する重要事項


基本方針なので、当然
差別とされるのはどんなことか?
差別の対象者となるのはだれか?
差別を解消するための措置とはなにか?(合理的配慮等)
できない場合はどうするのか?

そんなことを具体化し、事業者や行政、国民に対して説明できるものにする必要があります。


16回では、「基本方針の素案」が出され、
それに対して議論をしました。
政府のHPに資料があるので、見ていただくと分かるのですが、
差別の定義がない、対象者がはっきりしていない、
障害のある女性や障害児などの複合差別が入っていない
等々、様々な意見が出ました。


それを、どのような文章で盛り込むか
自分が出した意見を「修正文案」として作って二日後までに
ださねばならないという宿題が出ました。


「差別の対象者に、障害者の家族や関係者も入れてください」
という意見の言い方は誰にでもできますが、
これを法律の文章案として出さねばならないということです。


「対象となる障害者は、障害者基本法第2条第1号に
規定する障害者うんぬん……(以下略)
 ※ここから追加※
なお、障害者の関係者(親族、同居者、介助者、
事業交流者、文化交流者)も対象とする」


といった感じです。
10ページにわたる基本方針素案を繰り返し読み、
障害者権利条約と照らし合わせ、頭を抱える作業です。


それでも多くの委員から積極的な意見が出され、
17回では委員の意見を一覧表にしたものをもとに議論。


たとえば、最初に述べたように
差別の対象に「障害者だけでなく障害者の関係者も含めるべき」という
意見に対し、
事務局は
「障害者差別解消法の中で差別の定義を定めておらず
 現時点で含めるのは時期尚早」というような答えでした。

なぜなのか、他に工夫できないのか?
正直私はこのとき、理解できず反論すらできませんでした。
私を含めて、委員はもっと確認なり反論なりする必要があったと反省。


ここでご紹介したのは、ほんの一部ですが
今回の議論を踏まえて、
次回では「基本方針素案の修正案」が事務局から出されることになっています。
それをもとに再議論し、パブコメの原案ができ、年内の閣議決定となるようです。
次回が大きなヤマとなりそうです。



以下は、「障害者政策委員会」に参加し、私個人としての感想や思うことです。

この委員会、私としては5回目となりますが
毎回極度の緊張状態に置かれます。
(いまだに発言時、手話ができないくらいです。笑)
この政策に長く関わられてきた方々が委員にも、傍聴席にも
いらっしゃいますし、
委員会開始から終了まで、すべてが動画撮影され、政府のHPで公表されます。


委員会は月曜日開催ですが、資料が配布されるのは
金曜日か早くて木曜日。
週末をつぶして、資料を読み込み、発言したい内容をメモしたり
分からないことを調べたり、関係者に意見を聴いたりと
委員会準備にあてることになります。


各種団体の代表が多い中、私は「個人」という立場です。
障害のある女性、子育てをしている母親、主婦、
働いている、等々の立場です。
各種団体は、団体の意見を集約して発言をするなどの
バックアップがあります。
私にはそれがありません。
だから私は、できるだけ傍聴者の方々と話すようにし
色んな声に耳を傾けようと思います。
それから、他の委員とも良い関係を作り、連携できるようにしていくこと。
つまり横のつながりを作るという事。
そして個人的に相談をさせていただいている方もおります。
聴覚障害者としての意見を、根拠をもって
丁寧に教えてくれるのでとても助かっています。
そんな中で、傍聴者から「ここはこんな文案で出してほしい」と
具体的に指導してくださる方も増えてきました。

「委員」の口を通して「意見を伝える」これも方法のひとつ。
(もちろん内容にはよりますが)
こうした応援はとてもありがたいものです。

でもね、
本当は、
ろう、難聴、中途失聴、高齢難聴など、聴覚障害関係を横断して
あらゆる意見を集約することができたら、
(そうした団体や人がいたら)
どんなにか良いのにと思うのです。
ひとりひとりのこれからの生活に関わってくる大切な法律です。
傍聴席の中に、聴覚障害関係者が少ないのも寂しいなーと思いますし
もしかしたら外見で分からないだけかもしれません。
ぜひ声をかけてくださいね。


最後に私が最近やっとわかったこと。
それは、こうした法律というのは
「できるだけあいまいに」という力がはたらいているらしい。
ということ。


私は、政府や事務局は「より良いものを作りたい」から
様々な委員を集めて委員会を開き議論をしているのだと思っていました。
だって、打診があったときにも、「一緒に良いものを作りましょう」と言われましたし。w


「あいまい」な表現をいかに「具体的」にするか。
法律の範囲でできること、できないことがありますが
皆さんの知恵をお借りし、「より良いもの」を目指したいと思います。
ご指導よろしくお願いします。