第21回内閣府障害者政策委員会の報告

5月29日、第21回内閣府障害者政策委員会が開かれました。
この日は、前国連障害者権利委員会委員長を務められたロン・マッカラム氏の講演、
その後、
・保健・医療
・文化芸術活動・スポーツ
・生活環境
といったテーマに沿っての議論。
四時間にわたって盛りだくさん。
傍聴されていた方々もお疲れだったことでしょう。


障害者権利条約を批准した国は、二年後に国連の権利委員会に対して
施策がきちんと進められているか、政府報告書を提出しなくてはなりません。
(日本は昨年一月批准)
報告書を作成するにあたって、政策委員会が監視を行う役割を担っています。


ロン・マッカラム氏は報告書の審査をされていた立場から
良い報告書とは、
正直であること、改善された点だけでなく、今後改善できる課題も認識していること
そのほか、重要視するポイントとして、
障害のある女性、子ども、アクセシビリティ、教育、労働など、とても分かりやすいお話しを頂きました。


その後の議論で私が発言したのは<文化>に関して下記二点。
■第三次障害者基本計画実施状況案のP33、3-(4)-2

国立劇場等では、一部の公演において字幕表示を導入」
と書かれていますが、
一部というのは全体のどれくらいか、数値を示してほしい。
NPO団体「シアター・アクセシビリティ・ネットワーク」が、
昨年、「舞台鑑賞および情報保障についての意識調査」を約1000人を対象に行いました。
その結果、聴覚障害者の約9割は舞台鑑賞を希望しているのに、
その中の約半数が諦めるという結果になっています。
文化庁などが出している助成金の費目には、情報保障に関する項目がないために、
字幕や音声ガイド、舞台説明会、点字プログラム、手話通訳や手話説明などの
情報保障を行うことができず、ほとんどが自己負担で対応しているのです。
この現状に対して、助成金の対象に情報保障という枠を盛り込むことが必要だと思いますが
今後積極的に対応していくことは?

【参考】障害者権利条約 第三十条
「利用可能な様式を通じて、テレビ、映画、演劇、その他文化的な活動を享受すること」とある。


■P34、3-(4)-5 映画について
バリアフリー映画の上映を行う等の
バリアフリー映画の普及に向けた取り組みを実施した」
と書かれてあります。
しかし現実には、聞こえない私が、邦画を観たいと思っても、
字幕付き上映は限られた映画館で、二日間程度の上映に限られています。
「映画上映に関するバリアフリー対応に向けた障害者の視聴環境のあり方に関する調査事業報告書」があります。
http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2015fy/000192.pdf
メディアアクセスサポートセンターがまとめたものです。
ここには
「2014年国内映画の公開数615本中、日本語字幕が付いた作品は66本。
全体の10%程度。
音声ガイドにいたっては、615本中、6本。
全体の1%」
とあります。
日本人なのに日本の映画が楽しめないというのは、明らかに異常な現状です。
映画についても、バリアフリー補助金を別に設定することや、
「音声透かし技術」など新しい技術を積極的に推進することもふくめ、
今後の施策として考えているかどうか?


観劇も映画も、その他文化施設をあらゆる人が楽しめるかどうかは
その国の文化水準をも表していると思います。
最近増えている邦画の日本語字幕は10%、音声ガイドは1%って、びっくりですよね。


そのほかの委員からも積極的な質問や意見が出され
内閣府のHPに動画もあります。
今後の政策委員会の傍聴申し込みも、どんどん始まっているので
興味があればぜひ申し込んでくださいね。
http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/seisaku_iinkai/index.html