「スーパー歌舞伎2ワンピース」台本を借りて楽しみました



スーパー歌舞伎2ワンピース」!台本を借りて観劇しました。
歌舞伎座では、台本等を文字表示する「字幕ガイド」の貸出があるのですが、
ワンピースの会場となる新橋演舞場にはないのです。
そこで当日台本を借り、開始前や休憩時間に読むことで楽しみました。
レーザーや音響、火や水(最前列びしょぬれ覚悟!)など大胆に活かしたエフェクトは見ものです。
歌舞伎の概念を覆す斬新な演出をしつつ
立ち回りや見得などの演技でONE PIECEの世界観を見事に表現しています。
結果的に楽しめたのですが、実は様々な紆余曲折がありました。


後輩に誘われてチケットをとってもらったのですが
新橋演舞場には字幕ガイドがないことに気付いたのが発端でした。
後輩が問い合わせると、
「字幕ガイドの用意はできない。貸し出し用台本もない」とのこと。
そして、「演劇や映画専門の大谷図書館」を紹介されました。
大谷図書館では
著作権の問題で貸し出しはできない」という回答。


つまり同じ料金を支払っても、
セリフやナレーション、音楽が聞こえない聴覚障害者への対応はないということ。
障害が理由で断られたり拒否された場合、皆さんならどうしますか?
いくつかの対応方法が考えられます。


1、仕方ないとあきらめる
2、 SNSなどで相手を非難する
3、 相手に苦情やクレームをつける
4、 相手に交渉し、建設的な対話を試みる


1、2、3はカンタンです。
2はブログやツイッターフェイスブック等で非難し拡散させれば
多くの人の同情を集めることができます。
SNSでよく見かけますよね。
結果的に何か変わるかもしれませんが
自分と相手との関係は後味の悪いものになります。
4は、交渉力、コミュニケーション力、辛抱強くやり取りする忍耐力、
そして多くの精神的エネルギーの負担を伴いますが、
互いに歩み寄る可能性が開けます。


今回私と後輩がとった手段は4。
だってせっかくとれた一等席、
内容が分からない歌舞伎なんて観たくないもん。
「先輩と楽しむためなら頑張ってみます!」そう笑顔で申し出てくれる後輩に
私は最低限のアドバイスをして、すべてをゆだねることにしました。


まずはシアターアクセシビリティネットワークを紹介。
観劇のアクセシビリティに取り組む団体です。
http://ta-net.org/


貴重な助言を頂きました。
著作権については問題ないのでは…」と。
著作権法第三十七条の二
聴覚障害者等のための複製等) について
音声を文字にすることや、聴覚障害者等が利用するために必要な方式により、
複製し、又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)を行うこと。
聴覚障害者等向けの貸出しの用に供するため、複製する。
ということが書かれているのです。
つまり、広義に解釈すれば聴覚障害者等のための複製を認めているということ。


同時に、後輩はスーパー歌舞伎ワンピースの企画演出をしている
猿之助氏の事務所にも相談をしました。
建設的な対話すら見られず、残念な思いをしました。


また、メディアアクセスサポートセンター(MASC)にも相談。
http://npo-masc.org/
「松竹創業120周年公演であり、
文化庁芸術祭参加公演なので、文化庁にも連絡してみては」とのこと。
文化庁からは、いまだに回答がないとのこと。


しかし、著作権法で台本貸し出しについては許可をしてもらえるかも
しれないという希望が持てたので、
次は「松竹株式会社に問い合わせてみよう」と。
そのときに、下記四点を入れることをアドバイス


1、相談、要望を明確に(これまでの経緯も)
2、その理由(聴覚障害について)
3、具体的な方法(できればリアルタイムで理解できる字幕ガイド、ダメなら台本の貸出等)
4、楽しみたいという気持ちはみんなと一緒
  お互いにとってメリットがあることを強調!



早速後輩が素晴らしい文章を作成し
松竹株式会社の問い合わせフォームから送信。
返信がないため、再度問い合わせること数回、
やっと松竹株式会社営業部の方に、誠意のある対応をしていただくことができました。
よく頑張りました後輩!
当日は担当者が、簡単な手話で案内するほか
説明文をあらかじめ印刷したものを準備してくれていました。
ここまでくる道のりの長かったこと。


しかし、「言ったもん勝ち」ではいけませんよね。
諦めてしまう人が多くいるという事実。
正直言って、聞こえないからとこうしたやりとりが必要になるのは面倒で、
できることなら避けたいです。
交渉事をするときは、権利の押し付けだけでは相手の心を動かせません。
相手の事情を汲む言葉を選び
非常に気を使います。
神経すり減らし、心身ともに疲れます。
気持ちに余裕がないとできません。
今回は後輩が根気よく対応してくれたのです。
興行側としては、対応方法を知らない、あるいは面倒だということもあるのでしょう。
でも、障害の有無でお客様を選んでいるという事実は
事業者側、興行側としても残念なことではないでしょうか。
今回の一件を、担当者だけに留めることなく
関係部署の方々と情報共有をしていただき、
今後同様な問い合わせや相談があったときの対応に
つなげてほしいと、お礼とともにお伝えしました。


日本固有の伝統芸能を多様な人に楽しんでもらえるように、
エンターテインメント企業としての松竹さんらしい取組に期待したいと思います。


余談ですがワンピースにはまり、全巻読破中の私です。

スーパー歌舞伎2ワンピース」
http://onepiece-kabuki.com/