富士吉田中学校での講演会

富士吉田中学校でのPTA主催講演会は全校生徒約450名と保護者、教員が対象。
大人数なので、体育館には3年生と保護者のみ
1、2年生は教室でオンライン聴講です。

ご依頼くださった三浦校長先生とは15年ほどのお付き合いでしょうか。
誠実で、常に物事の本質を見極める姿勢や
人の機微をとらえる繊細さと、ユーモアとサービス精神を持ち合わせた先生です。
今年もお世話になりました!

富士吉田中学校は、文字通り富士山のふもとにあり
全校富士登山や火山噴火を想定した「親子富士山防災講習会」を
開催するなど、地域の自然や文化や歴史と、
富士山との結びつきを大切にしている学校です。

学校に入って私が夢中になったのは
廊下に並ぶ金魚やカメ、イモリなどずらっと並んだ水槽です。
目玉はウーパールーパー
なんと冬に300個もの卵を産んだことが
新聞でも報じられたほどです。
生き物がいると心が癒されますね。いい学校だなぁ。

実はこの日、校長先生の誕生日だと事前に知り
講演の冒頭で「皆さん今日は何の日か知っていますか?」(ざわざわ)
「校長先生のお誕生日です。おめでとうございます!」と言うと
一斉に拍手が湧き起こりました。
とても反応が良くて私も嬉しい。

講演中は一転、熱心に聞く姿勢に圧倒されました。
千葉に住む私の家から遠くに見える
夕焼けの中に映える小さな富士山の写真を見てもらいました。
ため息が出るほど美しい自慢の一枚です。

その後、前夜のホテルから正面に見えた雄大な富士山の写真を出しました。
日が落ちた後の息をのむほど圧倒される美しい一枚です。
皆さんが普段見ている富士山はこんなに大きいのですね。と。

どちらも同じ富士山ですが、見る場所によって全く違う見え方になります。
そんな話から、視点を変えると価値観が変わるし
視点をふやすと世界はひろがること。
今回は聞こえない視点や、UDの視点など多様な視点を知ってほしいと
様々なテーマの話題をお話しました。

質疑応答では、「なぜ?」と本質的な問いの立て方を身につけていると感じることが
多くあり、私自身も考えつつ一緒に対話を深める時間となりました。

数日後、全生徒からの感想と
そして教員と保護者の皆様からの感想も一緒に届いてびっくり。

■「視点をふやす」という言葉を聴いた途端、
自分の見ている世界の狭さを実感しました。
その時、私は、世界のひろげ方を学びました。
とても心と記憶に刻まれた瞬間でした

■私は“障害者は助けてあげる存在”だと教わってきたのですが
そうした思い込み、固定観念を見直し
視点を変え、増やし、知る、の3つを考えるだけで
世界がひろがるという言葉がすごく頭に残っています。
視点を少し変えるだけでこんなにも新しい世界が見えることに感動しました。
これからは「助けてあげる」ではなくて
「一緒に楽しむためにどうしようか」と考えていきたいです

■松森さんは耳が聞こえなくなっても、心の耳は閉ざすことなく。
そして心の目で見て、心の耳で聴いて、心で話しているのだなと感じました。
だから松森さんの言葉は素直でストレートだし何よりも一生懸命に
僕たちの胸に、心に伝わってきました。
一人ひとりの価値は変わらないという言葉が、印象に残ったことの一つです。
松森さんの恩師から、松森さんから僕に。
すべての壁を超えて繋がる思いのバトンが今、私に繋がったと思います

聴覚障害のある松森さんとも共有できる富士山という、
素晴らしいものを有しているこの町に生まれ嬉しく思います。
そしてこの町で障害のある人ともっと共有できることは
ないかと考える機会となりました。

自分の目の前にあるものの価値観に改めて気付けること、そんな感性がすごくいい。
教員や保護者の方からは

■今の私たちに必要なアドバイスをいただけました。
SDGsの観点、キャリア学習の観点、様々な観点や視点がありました。
本当に前向きになれる講演会だったと思います。
生徒、保護者、教員、それぞれの立場で心に残る内容でした。

■講演会を通して、生徒の障害に対する認識や考え方が変わったと感じた。
直接お話を聞くことで、本を読むだけでは感じることのできないものを
感じ取れたと思う

■普段障害を持った方と接する機会がほとんどないので、
今回この講演を拝聴し自分の持っていた考えが固定概念だったと感じました。
子供にも『普通はね~』などとついつい口にしてしまいがちですが、
それも私自身を基準に、考えを押し付けていることと反省もしたりしました。
子供達も講演会に参加するので私も参加しておくか、と少し軽い気持ちで参加しましたが本当にいいお話を聞けました。
松森さんの様に行動的になるのは少し難しいかもしれませんが、
私も子供も知れて良かったです。
コロナ禍でもこのような機会を設けていただいてありがとうございました

そして、
「耳が聞こえなくなったとき、松森さんがお父さんに言われた言葉が印象的でした。
どんな親も子供が辛いとき、代わってあげられるものなら、代わってあげたいと思う。
代わってあげることが出来ないことが本当に辛いと思う。
でも、子供を信じているから、きっと乗り越えてくれると信じているし、見守ってやりたいと思う。
子供の力と可能性を信じ、見守ってやりたいと改めて考える機会になりました。」

という感想を見たとき

あ、父が生きている。

そんな風に思えました。
まだまだ父の死について納得できていない私にとっては
初めての体験、胸が温かくなり新鮮です。

そのほか、子どもとの対話のきっかけになったというコメントもあり
生徒の皆さんだけでなく、先生方や保護者からの感想ももらえたことで
あらゆる視点から自分の講演を受けとめてもらえたと分かり、安堵しました。

大人も子どもも対等な「ひとりの人と」して向き合おうとする
校長先生の人柄がこんな風土を作っていくのですね。