ホネの真相

土曜日の朝一番で、息子は上野動物園に電話をかけていた。
何を話しているかはっきりと分からないが、かといって通話中に「何を話しているの?」などと口を挟めない。

どうやら上野動物園には、動物相談窓口というものがあり、そこにいくと動物に詳しい方がいるようだ。いつでも来てくださいとのこと。今日から新潟の実家に行く予定でいたが、まず上野動物園に行ってそのまま上野から新幹線で帰省することにした。ホネを持っての帰省だが、私の両親も四人を育て孫は六人。たいして驚かないだろう。

おにぎりを持って満開の桜を堪能しつつ、上野動物園へ。
動物相談窓口には、おじいさんが一人いた。
タオルに包んだガイコツを机の上に広げると、おじいさんは「立派だなぁ〜!」といいながら、まるでピアノの鍵盤を左から右へポロロロロロン♪と流すように、びっしり揃った歯をカタタタタタ♪と弾いた。私の頭の中で思わずメロディーが流れそうになった。

たくさんの動物図鑑やら、骨格図鑑やら、紙が黄色くなった古びた専門書やらを何冊も引っ張り出して広げ、八歳の子どもと向き合ってくれるおじいさん。
一方的に話を進めるのではなく、「この歯の形をみてごらん。まるで二つの歯がくっついているみたいだろう。これは全部で何本ある?」といった感じで、質問しつつ、会話をしつつ、真相究明に導いているようだ。
一時間ほど調べて、やっとはっきりした。

ニホンジカのメス」

そうか、そうだったのかぁ〜。
鹿のメスは角をもたない。
当初可能性として高かった「羊」に比べると、鹿のほうが野生であちこちに生息しておりなるほど納得できる。

おじいさんに深くお礼をし、動物相談窓口をでた。
息子は開口一番。

「スッキリ〜〜!!」
私もだ。
数日間にわたったホネ調査。やっと解決だ。
面白い調査だったので、この一連の作業を作文に書かせることにしよう。

動物園を楽しみ、満開の桜のトンネルを堪能し、私と息子とニホンジカのホネは一路新潟へ。

春の陽気と真相究明で、スッキリウキウキ、半そでの私と空。
ところが、トンネルを抜けるとなんとやら。
湯沢を過ぎ、浦佐あたりの田園地帯は輝くばかりの銀世界。
一気に冬に逆戻りだ。

新潟駅に降り立った半そで親子。ホネ持参。
昼間は花見三昧だっただけに、北国の寒さは応えた…

息子は真っ先におじいちゃんとおばあちゃんに、ホネの真相報告!
後で聞くと、私が携帯で送った写真を見たときに「これは鹿じゃないかなー」と思っていたらしい。
なんでと尋ねると、「ずっと前に、みんなで捕れたての鹿を食べたことあったでしょ。そのときに見たから。」と母。

そうだった…確かに数年前、実家でバーベキューをやったときに近所の人が捕らえてきた鹿をさばいて焼いたり、新鮮だからこそできる鹿肉の刺身を食べた記憶があった。息子には内緒にしておいた。