講演で大切にしていることと、懐深き新潟

講演シーズン。
講演をさせていただくときに大切にしているものは「オリジナル」であること。
自分の体験、自分の言葉がメインであること。
逆に言えば、私にはそれしか話せない。
自分が体験した、「聞こえる世界から聞こえない世界へ」
計り知れない絶望感との向き合い方。
大学時代のユニバーサルデザインとの出会いや、年に四回の海外旅行、挙句の果ての段ボール生活、
手話や、育児、これまで関わってきたユニバーサルデザインの仕事。


たぶん、聞いている人は思っている以上に敏感。
それが、実体験からの話なのか、どこかで聞いてきた話なのか瞬時に感じ取る。


自分が講演をするようになり、積極的に他の方の講演も聞きに行くようになった。
そうすると、「知識」や「面白さ」あるいは「つまらなかった」という基準ではなく
講演の仕方や進め方の勉強をもすることができるのが面白い。
そうやってたくさんの方のお話を聞きながら、
講師がどこかで勉強してきたことや、コピー&ペーストの話は、
聞いている人には伝わらないものだと、分かってくる。
実体験からの話は圧倒的なインパクトがあり、それが一番心に響くのだと。



新潟県中途失聴者・難聴者協会創立20周年記念の講演をさせていただいた。
定員をはるかに超えた方々が集まってくださり、その中には、祖母と叔母、両親、息子(三世代か?)や
大学受験のために通った新潟美術学園の懐かしい先生の姿も。
新潟美術学園では、デッサンを描きながら、用紙のあちこちから、先生方がアドバイスを書き込んでくださっていた。
「にんじんが美味しそうに見えない」
「さっきより資材感が出てる!」
「この陰影は不自然」
ところどころに「お昼たべよ〜!」「○○の寝癖ヒドイ」などと友達からの雑筆談も。
今回は、それをスクリーンで紹介してみたりもした。

それまで聞こえないことを隠して生活してきた私にとって、高校三年生のときに通い始めた新潟美術学園は、
生まれて初めて「聞こえない私」として紹介してもらってスタートしたところでもある。



「聞こえるフリ」をしなくてもいいって、こんなに楽なんだ!
と正直驚いた。



聞こえないことで、いじめられたり、心無い言葉に傷つき、そんなマイナスの経験しかなかった私にとって
聞こえないことを受け入れてくれる仲間や先生方との出会いは、大きな財産となった。
そんな新潟での出会いのエピソードを絡めながら、感謝の気持ちを込めながらの講演。
沢山のお花をくださった方々、本を買ってくださった方々、佐渡から船で来てくださった方々、わざわざ東京、横浜からも来てくださった方々、貴重な休日を使ってきてくださった方々、本当に、本当にありがとうございました。


20周年記念という大きな節目のイベント、
準備に関わったスタッフの皆様は、終わるまで本当に大変だったと思う。
改めて心からの感謝を♡
これまでの20年、そしてこれからの20年の歩みを、ともに切り拓いていけるといいなと思う。


交流会、二次会、三次会、実家のお店「舟宿」に帰宅後常連さんから歓迎の杯を受け、店仕舞い後に両親と乾杯、翌日は祖父の三回忌。
ここでも恐るべし父方の親戚大酒豪陣。
徳利とお猪口しか持たなかった気がする。
色んな意味で新潟の懐の深さに改めて脱帽。